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第1章 光科学技術の歴史と限界 第1.2節
1.2光の研究の長い歴史を振り返ると[1]
17世紀にニュートンは光の「粒子説」を唱えました。つまり光はまっすぐ進んでいく小さな粒子の集まりと考えたのです。一方、ホイヘンスやヤングは光の「波動説」を唱え、図1.2に示すように光を波と考えました。こ こで空間も追む光の波の一周期の長さは波長[2]λと呼ばれ、単位時間に振動する頻度は周波数[3]ν: (周期Tの逆数)と呼ばれています。波長と周波数は反比例の関係にあります。
1905年にアインシュタインは光の量子説を唱え、粒子説と波動説の間の長期にわたる論争に終止符を打ちました。すなわち光はエネルギ一hνを持つ塊(量子)であると考えたのです。ここでhはプランク定数 [4]と呼ばれています。この量子は「光子」[5]と呼ばれるようになりました。光子は運動量も持っていて、それはhk/2π(πは円周率)で与えられます。またkは波数と呼ばれており波長に反比例します。
さて、上記の波動説によると波長と周波数は互いに逆数の関係があるので、今後の議論にはどちらを使 ってもよいと思われるかも知れません。しかし光子の描像をもとに議論する場合には不都合なのです。特に上記のように光子のエネルギーは周波数に比例するので、光源から発する光量が増えるということはエネルギーhνを持つ光子の数が増えることを意味します。つまり図1.3に示すようにn個の光子が発生すれば、発生した光のエネルギーはnhνとなります。
光子はニュートンの唱えたような粒子ではありません。エネルギーhνを単位としてとびとびの値を取るので、そのようなエネルギーのかたまりを粒子のように考えてはいるのですが、「空間のどこかに存在している小さな粒子」ではありません。光子はホイヘンスやヤングの唱えた波動のように空間に満ちているのです。
脚注
1 本稿は私が著者となり自費出版した「光科学技術革命 ドレスト光子はやわかり」―異次元の光技術入門― (丸善プラネット、2014年3月)の第1.2節の一部の文章と図を適宜アップデートしたものです。
2 可視光(目に見える光)の波長の例として、赤色、緑色、青色の光の波長は各々およそ680nm、510nm、450nmです。nはナノ、すなわち10のマイナス9乗を表します。
3 上記の赤、緑、青色の光の周波数は各々およそ440THz、590THz、670THzです。Tはテラ、すなわち10の12乗を表します。
4 物理学の基礎定数の一つで、その値は6.63×10のマイナス34乗 J・sです。
5 「こうし」と読みます。人の名前の「みつこ」ではありません。
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