チームにおいて心理的安全性を確保しながら最高の質を提供するために必要な3つのこと
私が勤めているジェネシア・ベンチャーズでは、毎月の1on1ミーティングで「強いチームの実現に向けて感じることや自分が貢献できること」を話します。このアイテムが1on1に含まれているのは、入社当時非常に新鮮に感じ、役職問わずチームの一員である以上、一人の考え方や行動でチームをより良いものに導くことができる、という思想に感動しました。
前回のnoteでも紹介した通り、ジェネシアでは個人のWillが尊重され、日ごろから自由闊達な議論が展開されます。自信をもって発言し、それを他のメンバーが受け止め、理解し、同意する、あるいは新たな視点を提供して更に議論が進む。この良いサイクルを生み出すためにはチーム内での心理的安全性が重要になります。ジェネシアでの心理的安全性は比較的高いと思っていますが、過去には心理的安全性が(自分にとって)皆無のチームにも所属していたことがあります。アウトプットすれば酷評され、それに委縮し何もできなくなる、そしてアウトプットが減ったことに対し更に厳しいフィードバックが来る…という悪循環に陥っていました。一方でそのチームの長所は圧倒的な質の高さ。フィードバックの厳しさも、徹底した質へのこだわりからきているものでした。
心理的安全性とアウトプットの質の高さはトレードオフの関係になりがちです。しかし、強いチームになるためには心理的安全性と質の両方を最高にしたいところ。この記事では、心理的安全性と質を相乗効果で高めるヒントを紹介したいと思います。
チームのリーダーはもちろん、組織に属していればどんな人でも他のメンバーに何かしらの意見を述べる機会はあるはず。チームの士気と団結力を上げながら最大のパフォーマンスを発揮するためのコツを知りたい人にぜひ読んでもらいたいです。
1. 質の種類別に適切な方法でフィードバックする(心理的安全性の維持)
あなたの目の前に、他のメンバーが作成したプレゼン資料があるとします。その資料の質の高さはどのように測りますか?わかりやすく情報が整理されているか。必要な情報が入っているか。誤字脱字、計算ミスはないか。はっとさせられるインサイトがあるか。読みやすいか。様々な要素の合計点でその資料の質の高さが決まります。フィードバックをする際にはあらゆる要素に対する意見を纏めて伝えてしまいがちですが、ここで重要なのは要素の性質に合わせてフィードバックの仕方も変える、ということ。
この特性を捉えた上でどのようにフィードバックすると心理的安全性を維持できるのか。その解はクリエイティブ面に否定ではなく提案や質問によるフィードバックをし、その上で淡々とテクニカル面の正誤を伝える、です。クリエイティブ面については評価する側もあくまでも一つの意見であることを十分踏まえた上で、「このような考え方もあるが、どう思うか」「なぜこのように考えたのか」などディスカッション形式で意見を交わせてブラッシュアップする。アウトプットを用意した側も問いかけられることにより、ただ言われた通りのことをするのではなく、より高い目線から考える練習ができますし、自分の意見が尊重されている、という印象から心理的安全性も損なわれません。その上で、少しだけ時間を取りテクニカル面への評価は感情を入れずに淡々と伝える。テクニカル面での間違いは見つけやすく、指摘しやすいためこの順序と時間の配分が逆になってしまっていることが多々ありますが、そうなってしまうと粗探しのようになり、心理的安全性は低下する一方です。
2. 圧倒的な質の高さを得るための施策
ここでも続けてアウトプットの質をテクニカル面とクリエイティブ面に分けて考えます。
ここでポイントなのは、アウトプットの質を大幅に引き上げるのはクリエイティブ面での要素、大幅に引き下げるのはテクニカル面である、ということ。例えば「2x3=9 ですが、実は9という数字はタイではラッキーナンバーなんですよ」なんて面白い情報を言われても、2x3じゃなくて3x3だよ…とがっかりしますよね。そして、個人の努力で大きく質を上げられるのがクリエイティブ面、あまり上げられないのがテクニカル面です。私自身そうなのですが、おっちょこちょいでどんなに気を付けても入れるべき情報を入れ忘れたり、何度チェックしてもなぜか間違えを見つけられないことが頻繁にあります。でも質を担保するためにはテクニカル面は間違えられない。どうすればよいか?
答えは「間違えないような仕組みづくりとテクニックの取得」です。例えばエクセルであれば見やすいレイアウトに変更したり、誤入力と思われる際にアラートが出るようにする。トリプルチェックするフローを組み込む。手入力ではなくCopy & Pasteを徹底する。ヒューマンエラーは常時発生していることを前提に、チーム全体でテクニカル面の守りを徹底します。
守りが完了したらクリエイティブ面の攻めの部分で圧倒的な質の高さを生み出します。ここは様々な打ち手が考えられますが、
① 誰に何を何のために訴求するかを明確にした上で、
② 相手の期待値を推測し、
③ 期待値に応えた上でそれを超える要素も入れ込む
というプロセスでブラッシュアップしていくとクリエイティブ面での評価をぐっと上げられます。常に相手の視点に立ち、ストーリーラインや情報量、情報の粒度が適切なのか見直すことが重要です。
ちなみにですが、イギリスの政治学者、グレアム・ウォーラスの「思考の技法」によると一度課題に直面した後、休止期間を置くことにより新たなアイディアを得ることができるそうです。アウトプットを用意するときも、一度着手してから一晩置いて考えるとよいインサイトを加えられるかもしれませんね。
3. 心理的安全性をどんどん上げるための施策
ここで改めて心理的安全性が高い、という状態はどういうことなのかを考えてみましょう。
心理的安全性が高いとは:自由に自分の意見を発信し、それを相手が受け止め、理解及び認めようとしてくれることを期待できる状況
だと私は考えています。Rule of Conductのような形でチーム全体で心理的安全性を上げていくのも一手ですが、他のメンバーの行動変容を強制させることはできません。まずはあくまでも自分のあり方から。ここでは個人単位ですぐできるアクションをいくつか紹介してみます。
<自分がフィードバックをする側のとき>
まず、褒めましょう。アウトプット内で褒められる要素が皆無だったらその人の服装でも、笑顔でも、声のトーンでもいいです。そして何かに同意をする。「僕もこのデータ、入れたほうがいいと思ったんだよね。」といった細かいことでも良いです。それにより相手の心がほぐれます。そして、一つ質問をする。これは、前段のクリエイティブ面での質問でも良いです。質問をすることに真摯にアウトプットと向き合っている、という姿勢を示せるのと、フィードバックをする側が一方的に発言し続ける状態を避けられます。
<自分がフィードバックを受ける側のとき>
何よりも肝心なのが心身の健康を確保できていること。特に睡眠は重要で、十分な睡眠をとることにより、前向きな気分になることは様々な研究で発表されています。体の調子を整えるのもプロフェッショナルとしての仕事の一つ、と考え、そのために必要な時間を確保することが大前提にあります。
その上で、受けたフィードバックが体系化されていなければテクニカル面とクリエイティブ面で分け、それぞれ適切な対応をします。そしてモヤモヤしている部分があれば、なぜ違和感があるのか、を突き詰めて考えます。例えば、「この数式を使うのはおかしい」というフィードバックに対し釈然としなかったとします。なぜモヤモヤしているのか?自分は絶対正しいと思っていて、その議論をするのが面倒だからなのか。あるいは自信がなかったところを鋭く指摘され、悔しかったからなのか。原因を突き止めることにより、冷静に対応することができます。
そしてフィードバックをする側、受ける側、という立場ではないフラットな状態での雑談をする時間もしっかりと確保することにより、絶えない信頼関係の構築ができると思います。
読んでいただいている方の中にもフルリモート中の人は多いと思いますが、リモートだとコミュニケーションが必要なものだけにそぎ落とされがちです。でも心理的安全性を高めるためにはフラットな状態でのやりとりも必須。ぜひ意識的に雑談の時間を設けてみてください。
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人が二人以上集まれば、すぐに「チーム」になります。会社などの公な場だけでなく友人同士、夫婦や親子もチームです。そして、アウトプットも資料だけではなく、発言や行動も同様のフレームワークで考えられます。例えば旦那さんが燃えるゴミの日なのに、燃えないゴミを出した、という行動に対するフィードバックを同じフレームワークで考えると、「ありがとう。いつもしてくれないのに、なんでゴミ出しをしてくれたの?そうなんだ、家事に協力したいと思ってくれたんだ。あ、でも今日は燃えるゴミの日だったんだよね。今度からわかりやすいように冷蔵庫に曜日ごとの種類の一覧を貼っておくね。ちなみに、ゴミを出すのも大変なんだけど、そのあとゴミ箱の中を拭くのも結構負担なんだよね。それもしてくれるとすごく嬉しい!でもとにもかくにも本当にありがとう!」みたいなコミュニケーションになります笑。
強いチームを創るための必須要素である「傾聴」について、ジェネシア代表の田島のnoteでも紹介しています。興味がある方は、ぜひそちらも読んでみてください。
最後にもしよろしければ、このリンクの下部にあるTEAM BY GENESIAにご参加ください。私たちは、このデジタル時代の産業創造に関わるすべてのステークホルダーと、一つのTEAMとして、本質的なDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を目指していきたいと考えています。TEAMにご参加いただいた方には、ジェネシア・ベンチャーズから最新コンテンツやイベント情報をタイムリーにお届けします。
最後まで読んでいただきありがとうございました!皆さんからのコメント、お待ちしています。