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【市会議員への道】現場に長く携わって来られた方が警鐘を鳴らす、安全確認を外部委託することの危うさ

「福祉増進と職員負担軽減との両立をめざす」というテーマで発信している、みきやと申します。関西在住の地方公務員で、2027年4月の統一地方選で地元の市会議員になり、地場産業を取り戻すことをめざしています。

先日、10年ぶりに以前一緒にお仕事をさせていただいた方と飲みに行きました。その方はさまざまな自治体の子育て支援部門と関わりのある方なのですが、今回大阪府で展開されている「安全確認」業務について、外部に委託されていることを大変危ぶんでいらっしゃいました。

少し踏み込んだ内容になるかもしれませんが、今回はこのことについて書きたいと思います。

安全確認の外部委託について

安全確認は児童虐待防止法上の義務

安全確認業務とは児童虐待防止法第8条に記載されている業務を指します。

市町村又は福祉事務所の長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の当該児童の安全の確認を行うための措置を講ずる

児童虐待防止法

この条文は「ものとする」で締めくくられており、市町村等に課せられている義務ということになっています。

「ひょっとしたらあの子、虐待されているかもしれない」という通報が役所に入った場合、通報を受けた役所は必ず安全確認をしなさいよ、というのが法律の趣旨ということになります。

この「安全確認」が外部に委託されている

この安全確認ですが、児童虐待に関する通報が年々増加しているため、通報のたびに安全確認をするとなると児童相談所の職員にとっては相当の負担となっています。

そこで大阪府子ども家庭センターでは安全確認業務を外部に委託し、職員の負担軽減を図っているとのこと。実際にこの記事を書いている2025年2月18日時点では関西こども文化協会が業務を受託していらっしゃいます。

軽微な案件は受託業者が安全確認の対応をし、緊急性や重大性の高そうな案件については本務職員が出向く、という分担がされているようです。こういった取組はメディアなどでも採り上げられ、職員の負担軽減に一定の効果を挙げているようです。

外部委託に潜む問題点

そもそも軽微か軽微でないか判断できるのか

まず分担の基準となっているのが軽微か軽微でないかというもの。これって本当に正しく分担できているだろうか、という疑義を呈されていました。これについて私は、今のところ幸い受託業者の側にも一定のノウハウが蓄積されていると思われるため、大事に至ることはあまりないだろうと見ています。

ですが、昨今の外部委託に関し、日本全国で発生しているのが人件費の高騰による入札不調。今後も永続的に当初目論んでいたような財政負担を軽減させつつ、同様の効果を挙げ続けられるのか、非常に不透明な気がしています。

最近は多くの市役所で、住民票や戸籍の発行等を扱う業務が外部委託となっていますが、ここ最近の人件費の高騰により「直接雇用するよりもコストがかかるのでは?」という状況になりつつあるようです。それでもなお低価格での入札を実施するとなると、入札不調か、人材の質を担保できない受託先が受注する危険性も大いにあると思われます。

人材の質が担保できないとなると、「軽微か軽微でないか」を正しく判断できるものなのでしょうか。ひょっとしたら受託業者の下で働く人に一定のスキルが蓄積されていたことで「軽微」となっていたものが、別の業者になった途端に「軽微でない」となる場合だって考えられます。そうなると業者と役所との押し付け合いになる可能性だって出てきます。

友好的な関わりを長期的に築けるのか

また、通報をもとに公的機関が家にやってくるとなると、ファーストコンタクトは相当気を付けないといけません。最初の部分でつまづいていしまうと、家庭と役所との間に友好的な関係が築けなくなり、長期的な見守りが危うくなります。

私も近くで子育て支援部門のケースワークを見ていますが、相当属人的な世界です。「この職員だからあの人の対応が問題なく進んでいるんだな」と思わされるケースが多々あります。そこに外部委託の業者を挟むわけですから、一定のリスクは覚悟しておかないといけないかもしれません。

また、安全確認に行った後のケアも問題です。担当の本務職員であれば自分の権限で引き受けるケースとなりますので、適度に間隔を空けて職員自らコンタクトをとるということができます。これが外部委託の業者となると、「何かあったらこちらに連絡して来てね」と連絡先を渡して終了です。

そもそも何かあったら相談に行けるくらいの精神状態だったら通報なんてされないわけで、そこをすっとばして「適切に案内しておきました」で済まされるようなものなのでしょうか。

見守りが必要な家庭と長期的に友好な関係を築くという観点からすると、安全確認の外部委託はリスキーだと思わざるをえません。

まとめ

以上のとおり、現在進められている安全確認の外部委託について書いてみました。外部委託に潜む問題点をおさらいすると、

  • 軽微か否かの判断が難しい

  • 入札不調等のリスクが高まっており、質の担保に課題

  • 長期的に友好な関係を構築できるか疑問

ということになります。生活保護に配置基準があるように、子育て支援に関しても何らかの配置基準を設け、本務職員を育てていくことが本来あるべき姿なのではないかと考えています。

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