そういう時代だった
少し前に、元バレーボール選手の益子直美さんがかつて指導を受けていた監督に会いに行き、当時のいわゆる「しごき」について今どう思っているかを問う番組をテレビで観た。
益子さんはスポーツに疎い僕でも知っているような華々しい活躍をされた選手だけど、子供時代は「恐怖心しかなかった」と語っている。そして現在は若い世代にそのような経験をさせないように「監督が怒ってはいけない大会」という取り組みを続けておられる。
彼女は慎重に言葉を選び、また最大限に気を遣いながらかつての指導者から反省の意を引き出そうとするも、監督は「そういう時代だった」と最後まで自らの非を認めようとしなかった。
確かに「そういう時代」は存在し、それはスポーツに限ったことではなかった。
僕が通っていた公立中学では、今では考えられない体罰が当たり前に行われていた。教師による酷いセクハラもあったという。
体育の授業時間中、生徒を正座させ、その前で昨日下校時に買い食いをした生徒を1時間殴り続けた教師。
左利きの生徒の髪の毛を引っ張り上げ「左利きはカタワでっせ」と右手で字を書かせた教師。
部活の女子生徒を日曜日に呼び出し自分の部屋の掃除をさせる教師。
「あの時代」はなかなかの地獄の日々だった。
今年還暦を迎え、中学の同窓会の誘いが来た。
懐かしい幼馴染に会うのは楽しいかも知れないけど、学校の先生はまだお元気なのだろうか。
もし先生も参加されていて、しかもお酒も入ったなら、あの今では考えられないような暴力による指導を今振り返ってどう思うかと聞いてしまいそうで気が進まない。
やはり「そういう時代だった」と答えるのだろうか。