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overdose ~致死量を超えた恋~
___本当は分かってた。
いけないことだったって分かっていたのに……。
この手から伝わる温もりが全て愛だと錯覚した。
朝目が覚めると、部屋には私一人しかいない。
酔いが治まらない感覚に頭を抱えながら、気だるい体を起こした。昨夜脱ぎ散らかした服を拾い集めると、水を求めて台所へ向かった。
コップに注いだ水を飲み干して一息つくと、殺風景な自分の部屋を見渡した。自然と昨夜ここであったことが思い返され
伝えられなかった想い…
___「さよなら」「ありがとう」
澄み渡った青空に向けて、声の限りそう叫んだ。
誰もいない河川敷にポツンと一人座ってみる。
どんなに声を上げたところで、きっと私の言葉は届かない。それでも叫ばずにはいられなかった。
もしかしたら風に乗せて、あなたが旅立った先に届くかもしれないから。
目の前に広がる空があなたと出会った日の空に似ていたから、どこかで繋がっていてほしいと願いを込めた。
数年前に入院
子(ねずみ)の婿入り
___空を押し上げて手を伸ばす。
分厚い雲で覆われた灰色の空から、雨水が容赦なく降り注ぐ。その感触を手で確かめると、夢ではないことに落胆してため息をついた。
雨は昔からどうも苦手だ。
鼻につくような土の匂い、泥が跳ねる足元、うねりを増す髪、気まぐれに起こる偏頭痛……不快な要素ばかりが頭に浮かび、そのどれもが私を憂鬱にさせる。そんなときはいつもなら家にこもってやり過ごせばいいのだが、生憎今日はそう
だから僕は音楽をやめた
___考えたってわからない。
いつだったかはもう思い出せない。
だけどもうずっと長い間、苦しめられてきた気がする。
君のせいで大好きだった音楽が聞けなくなった。
好きだったラブソングも、流行りの曲も、音が頭に響く度に苦痛を感じるようになった。
大好きだったピアノも、ギターも、弾く度に調律が狂っているように聞こえて触れなくなった。
密かに自慢だった絶対音感も、気づかないうちにどこか遠くに置いてきて
バレンタインの思い出
その日の朝、登校中の私の手は寒さに加え、緊張でいつも以上に震えていた。
誰よりも早く学校に着かなきゃ、せっかくの計画が全て水の泡になってしまう。
誰もいない校門をくぐり抜けると、先生の靴箱目がけて全力疾走した。玄関口を開けると2月の冷たい風が吹き抜けて、落ち葉がくるくると足元で舞っている。
「よかった……」
誰にも見られていないことを確認すると、昨日用意したものを先生の靴箱に押し込んですぐさま逃