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新入社員の成長支援、上司だけでいいの?――調査結果から考える職場のサポート体制

上司とのコミュニケーション、量だけでなく質も重要という結論

ALL DIFFERENT株式会社が2025年2月10日に発表した「入社1年目社員の意識調査」によると、上司とのコミュニケーションについて以下のことが明らかになったそうです。

  • コミュニケーション手段の主流は対面:社会人1年目社員の約8割(78.9%)が、上司とのコミュニケーション手段を「対面」で行っている。

  • 半数以上が1日1回以上のコミュニケーション:上司と「1日に複数回」コミュニケーションをとる社員が40.7%、「1日に1回程度」が15.0%で、合わせて55.7%が毎日上司と接触している。

  • コミュニケーション頻度と満足度の関連:上司と1日に複数回コミュニケーションをとっている社員の73.0%が、その量を「十分」と感じており、頻度が高いほど満足度も高まる傾向が見られる。

  • 頻繁なフィードバック*が成長に寄与:4割超の社員が上司から1日1回以上フィードバックを受けており、うち8割以上がそれが「気づき・成長につながっている」と感じてる。一方で、約2割が上司からフィードバックを「もらっていない」と回答している。

  • 相談頻度に課題:上司への相談頻度について、「していない」と回答した社員が25.1%と最も多く、相談しづらさを感じている可能性が示唆される。

*問題点を指摘し、ともに改善策を考える双方向型コミュニケーション

そして、まとめとしてこんなことが書かれています。

本調査の結果から、社会人1年目社員の成長を後押しするうえで、上司とのコミュニケーションの総量だけでなく、フィードバックや相談など、コミュニケーションの質を向上させることがカギを握ることが推察されます。

2025.ALL DIFFERENT株式会社,入社1年目社員の意識調査

この調査結果と結論について、みなさんはどう思われますか?

改善を「上司にだけ求める」で良いのか

まず私は、「新入社員がこんなにも上司とコミュニケーションを取っているのか」と意外に感じました。そして「コミュニケーションの量と質が大事」という結論には「そりゃそうだろう」と思いつつ、これを上司にだけ求めるような伝え方に疑問を感じました。

そもそも、この調査でいう「上司」とは誰を指しているのでしょうか。課長クラスのマネジャーなのか、それともリーダークラス(課長を支える立場の非管理職)を含んでいるのか。それによって、見え方も結果の捉え方も変わってきます。

仮に「課長」のみが「上司」に該当するならば、新入社員に対して毎日これだけの頻度でコミュニケーションを取ることが本当に可能でしょうか?

マネジャーの業務負荷が大きな問題にもなっている中、数名~10数名いるメンバーの中の新入社員に対して、このように多頻度なコミュニケーションを行うことが本当に目指す姿なのでしょうか?

さらに「もっとフィードバックを」「もっと相談を」というのはマネジャーの業務的にかなり酷なのではと感じます。

職場全体で新入社員を支える仕組みを考えよう

さらに、部下の成長支援という観点から見ても、上司一人が「フィードバック」や「相談」など全てを担うのは適切ではありません。

「職場学習論」(2010,中原淳)によると、業務に関する支援(業務支援)は、年の近い同僚や先輩社員から受ける方が効果的であることが示されています。

一方で、内省を促したり(内省支援)、精神的な支えを提供したり(精神支援)するのは、上司からの支援がより効果的だと言われています。つまり、新入社員の成長支援には、上司と先輩・同僚、それぞれ異なる役割があるのです。

*書籍はこちら

*この書籍の概要はこちらのnoteが素敵にまとまっています。

業務のやりとりを日常的にするのはリーダークラスや年の近い先輩社員が担当し、内省支援や精神的なフォローは上司が行う。このように、新入社員を「職場全体で支える」仕組みをつくることが、より効果的な成長支援につながるのではないでしょうか。

(この調査での「上司」が一体どういう立場の方で、メンバーは何人くらいいて、年齢はどのくらいで、どんな職場なんだろう?など、調査の向こう側の景色をいろいろ考えてしまいました!)

まとめ

今回の調査結果をもとに、「上司がもっと新入社員とコミュニケーションを取るべきだ」と結論づけるのは簡単ですが、それが本当に職場にとって最適な施策なのか、慎重に考える必要があります。

ある調査結果の数字のみを追うだけでなく、そのほかの研究なども参考に、この結果から何を導き、どんな行動につなげるべきなのかまで考えることが、職場づくりにつながるのではないでしょうか。


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