
不本意ながら漢字多し
前回、実務翻訳の訳文に「漢字が多い」「漢字が多いと読みにくい」と述べました。
ところが、ところが、です!
翌日に翻訳した実務翻訳の原稿、翻訳作業を終えてから校正している最中に気付いてしまいました。法律関係の用語が出てくると漢字がめちゃくちゃ増えるという事実に……。
海外の法令や法案であっても、多くの場合、日本語に翻訳された「題名」があり、日本語の訳文を作るときには、この‘’正式な題名‘’を使わなければ間違いとされる風習があります。そうなると、漢字表記の多い正式な題名を使わざるを得ず、一文に法令の題名が2つ以上出てくると、視覚的には中国語にひらがなとカタカナが若干入り混じった雰囲気の文章へと変貌するわけです。
そう、漢字の割合が多くなる翻訳文の特徴の一つが、特定の言葉やフレーズに相当する固有の日本語訳が存在し、それを使わなくてはいけない場合という事実を発見しました。そして、漢字増し増し文章からにじみ出る暑苦しさは、漢字という表意文字を使う日本語の一つのデメリットということも。
そういう場合は、無理して文字バランスは取らずにそのまま訳すのがベストだと思います。表意文字のメリットは一瞥してその意味が理解できる点で、それを読み取る目線は思いの外サラッと流れるはずです。人は意識しないと記憶しないので、サラッと流れたものに‘’暑苦しさ‘’は感じないし、違和感すら覚えない可能性もあります。
結局、私たちのように文字と文章を扱う仕事をしていると重要なことでも、読み手にしてみれば内容が分かれば十分なわけで、文字のバランスなどはどうでもいいことなのかもしれません。
でも、翻訳者がぞんざいな翻訳文を作ると、普段はサラッと読んでいる人でもその粗悪さに気付きます。これが怖いところなのですよ。それこそ、同じ高さの階段をタンタンタンとリズミカルに上って(下って)いて、途中に数ミリ高さの違う階段が一段あると体が敏感にそれに気付くのと同じ。
普通の人が気にしないポイントであっても、そこを意識して作業するのがプロです。当然、読みやすいように整えたくても、どうしてもそれが無理な場合が稀にあるわけで、そういうときは無理しないのが一番。読みやすいように整えられる翻訳で実行すればいいだけの話。
ただ、私は味気ない実務翻訳を少しでも味のある読みやすいものにするべく今後も精進します(笑)。せっかく誰かが一生懸命に書いた文章ですもの、他の言語での命もちゃんと吹き込んであげないとね!
※上のアルパカ2頭のイラストシリーズ、かなり気に入っています♪