名門の名は浜言葉

ひとり娘が産まれて、
「名前、エリっていうのはどうかな。今どきの変に凝った名前じゃなくて。字は、漢字というのも硬いし、ひらがな はかえって気取ってるし、カタカナで「エリ」っていうのはどうかな」とポクが言うと、ウチの奥さんは優しい表情 「そうね」と言った。
実は、その時、隠していたことがあった。いや、隠そうとして隠したんじゃない。 そのひとり娘のエリは、小学校に入学すると、我が子ながら、なかなか出来が良く、夫婦共に横浜生まれ横浜育ちの ウチの実さんとボクは、
「それなら、やっぱり、日指すはフエリス!」とハイタッチ。自分たちは中学高校と公立だったからなおさらだ。 「そうだ、このネットの書き込み、見てご覧」 「横浜で生れ育った方に質間です。私もハマっ子ですが、「Feリス」のこと、「フェリス」って言いますよね。幼な じみや、ご近所の「フエリス」出身のおばあちゃま、皆、「フェリス」と言います。最近は、画倒ですが、相手によっ て、「Feリス」と「フエリス」を使い分けています。横浜出身者は、皆、そうなのでしょうか。この、「Feリス」 と「フェリス」の違いはどこから来ているのでしょう?」
「「フエリス」ですかなつかしい響きですね。若い頃、「フエリス」の女の子の後ろ姿に、胸をときめかせたもので す。こちらに引越してからは、「Feリス」と言わざるを得なくなり、「フェリス」とロにするのも、あのときめきを 思い出すのも心の中だけになってしまいました」 「そういえば崎開軒の「シウマイ」も「シュウマイ」ではなく、「シウマイ」。昔の人は「Fe」とか「Shu」とか、 小さい「エ」、小さい「ュ」が苦手だったのかも」 「明治時代は、漢字で、「ぬの」、「めぐみ」、お利口さんの「利」、横須賀の「須と書いて、「布恵利須 だったそう です」
ウチの奥さんとボクは声を揃えて一緒に笑った。
「やっぱり、フエリスは、フエリスじゃん」 「それにしても、ウチのHリって、なかなかいい名前ね、フエリス合格、間違いないわ。エリがフエリス。名前を付 けた時は、全然意識しなかったけ。あの子は、あの子の世代はフェリスじゃなくてFeリスって言うけど」 はまっ子同士だからこそ、一緒に笑えて、嬉しくて、ボクは気が緩んでしまったからか、つい、失言してしまった。 「いや、意議してたさ、考えてたさ」
ウチの奥さんの表情が変わった。
「え?どういうこと?」
白状した。初恋の子がフェリスだったということを。自分は公立、彼女はフェリス、ボクの思いに気付いてもらえな いまま、遠ざかっていってしまったことを。隠そうとして隠したわけじゃない。というか意識していた、考えてい たと言ってしまったけど、特に意識してたわけじゃない、考えてたわけじゃない。 「エリは、ェリの世代は、フェリスじゃなくて、Feリスって言うから、いいようなものだけど、これで、フェリス に合格できなかったら、パバの初恋の人の出身校から取った名前だなんて分かったら、フエリス落ちたらどうする の?」
「いや、別に彼女のこと、意識してたわけじゃないよ、別に考えてたわけじゃないよ。ただ自然に···偶然なんだ よ」
「さっきは、違うこと言ったじゃない」
「それはそういう意味じゃなくて」
「じゃ、どういう意味?」「それはそういう意

こんなことも、あったけど、エリは見事、フエリスに合格してくれた ボク達は、心境は微妙に違っていたけれど、声をそろえてエリに言っ 「エリ、フエリス合格、本当におめでとう」

「パパもママも何度言ったら分かるの。恥ずかしいからんとF

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