【アーユルヴェーダ】パンチャカルマ 感情を浄化する
私は南インドのアーユルヴェーダ病院に、3週間パンチャカルマという浄化療法を受けに行ってきました。
アトピーの改善を期待していたのですが、身体だけでなく心にも作用がありました。
入院して暫くは、生理が来たこともあり(生理中は治療が中断されます)のんびりと過ごしていました。
生理が終わり、パンチャカルマの前処置であるギーという油を飲み始めました。
3日間飲むのですが、1日目は50ml(2日目100ml、3日目200mlと増えます)。
朝6時半にスタッフが私の部屋までギーを持ってきてくれました。ギーを飲むのはつらいと聞いていたのですが、50mlを飲むのは簡単で、気持ち悪くもならず、飲めた達成感に浸っていました。
ギーを飲んだ後は眠ってはならないとのことで、起きていなければなりません。
雨が降っていたので、部屋を出て雨を眺めることにしました。
雨季の終わりでしたが、バケツをひっくり返したような雨が日に何度か降っていました。その日も、豊富な雨が大地に降り注いでいました。南インドの植物は、温暖な気候と豊富な雨により成長が早く、大きく育つようです。
大きな雨音を聴きながら、恵みの雨を静かに感じていました。
ふと視線を落とすと、とっても小さなカタツムリが這っていました。這った跡がクネクネと濡れた軌跡を残していました。
次第に、他の滞在者も起き出し、部屋の外へ出てきました。軽く朝の挨拶を交わし、笑顔を交わしました。
瞑想をしようと部屋にもどり、ヨガマットに横になりました。
思考が頭の中を飛び交い始めたので、それらを見つめるよう努力しました。
次第に孤独感のようなものが湧いてきました。そして小さな泣きたい衝動を感じました。普段なら簡単に抑えられる、小さな衝動でした。
特に抑える必要がなかったので、その衝動を抑えないようにしてみました。すると静かに涙が出てきたので、少しの間泣きました。
泣けたことに安堵し、泣いたことで心地よい疲労を感じていました。
すると、ノックの音が聞こえてきました。
出ると、調理スタッフの中年の女性が、朝食を食べない私を心配している様子でした。彼女は英語ができないため、ギーを飲む日は朝食を摂らないことを、私は彼女に説明することができませんでした。彼女は心配し続けるため、英語のできる他のスタッフを探して説明してもらいました。すると彼女は理解し、笑顔を見せてくれました。
心配してくれたことが嬉しく、部屋に戻ると私は彼女の優しさを感じ、また一人で泣きました。
落ち着いたところで、部屋の外のベンチで読書を始めました。すると滞在者の一人、ムーサに会いました。彼女はフランスに住むイタリア人で、理学療法士をしておりアーユルヴェーダも勉強した経験があります。
今朝の感情的な出来事を伝えると、ムーサはハグをしてくれて、また涙が溢れてきました。彼女もパンチャカルマ中で、朝のトリートメントの時に訳もなく泣いたことと、セラピスト達がハグしてくれた事を教えてくれました。パンチャカルマが感情にも作用することを、彼女は知っていました。一通り話をすると、ムーサはジャスミンの花と白檀のコロンをプレゼントしてくれました。それらの香りとムーサの温かさに癒されました。白檀の香りには、心を落ち着かせる効能があるそうです。
ムーサと別れると、診察に呼ばれました。女性ドクターの診察を受け、涙が出やすくなっていることを打ち明けながら、また涙が出てきました。
ドクターは、デトックスの過程で感情的になる人もいること、パンチャカルマには身体だけでなく、心もデトックスする作用があることを教えてくれました。いきなり感情が繊細になり戸惑っていたのですが、ドクターの言葉にホッとしました。
診察を終えると、また別の滞在者パドマが私の部屋を訪ねてくれました。彼女はカリフォルニア在住のインド人で、IT関係の仕事をしていたそうですが、退職をして今は働いていません。知性と優しさを持っていて、はっきりとものを言える素敵な女性です。いつもは朝食の時間に滞在者同士で顔を合わせるのですが、私が顔を出さなかったため、どうしているのか気に掛けてくれているようでした。少し話をしようということになり、孤独感から泣いたことを話しました。パドマは色々話をしてくれて、人間は無いものを欲しがる生き物だけれど、今あるものに目を向けて感謝することを教えてくれました。その時の私には、その言葉は大事な気付きとなりました。パドマは私の抱える孤独感に、適切な言葉を与えてくれました。パドマと話をして、曇っていた心が晴れるような感じがしました。私の心から雲を取り除いたパドマは気持ち良く去っていきました。
しばらくすると、男性ドクターの診察に呼ばれました。彼にも感情面の変化を伝えると、ギーを飲み始めると感情的になる人は居て、悲しくなる人もいれば、怒りだす人もいると教えてくれました。
この日からしばらく、訳もなく泣いたり、些細なことで泣くことが続きました。
静かに涙が流れることもあれば、嗚咽するくらい泣くこともありました。
私は、悲しみと孤独の感情を解放させたようでした。そして、これらの感情を長年抑圧してきたことに気が付きました。
アーユルヴェーダではドーシャ(dosha)という概念があり、3つのドーシャ(トリドーシャ)のバランスが崩れると病気になりやすくなると言われています。
その乱れの始まりは、なにか否定的な認識をしている心で、感情を通して身体に現れるかもしれない。もしくは、身体の不均衡が、ドーシャの乱れを通じて心に影響を及ぼしているかもしれない。
いずれにせよ、心と体は強い繋がりがあり、身体のデトックスにより感情の解放が引き起こされたのは、自然なことだったように思います。