病院からの呼び出し(母の難病#4)
【9月26日】
この日は午前中に小学校で、夕方から夜にかけては子どもたちの居場所サポートの仕事があった。その合間の午後の数時間はスーパーで爆速で買い物をし、家族の夕飯を作ってから仕事に行く。
そのスーパーで買い物中に、主治医から電話があった。
「今日中にどうしても病院に来てほしい」
夕飯作りは諦めてすぐに病院に向かった。
夜中に母の血中酸素濃度や心拍数などが急激に悪化した時間があったが、先生や看護師さんたちが呼びかけたり身体をさすったりすると、何事もなかったかのように回復した、ということだった。
これを機に母は個室へ移った。
主治医に呼び出された理由は、
次にこういうことがあった場合に備えてどこまで心肺蘇生をするかを決めておかなければならず、同意書を作成する必要があったからだった。
心臓マッサージ等をするか否か。
私はしない選択をした。
母の肺や心臓の機能は問題ない。
母の場合、呼吸が不安定になるのは脳からうまく指令が出なくなるからである。心肺蘇生をして復活したとしても、よい状態を長く保つのは難しいだろう、ということだった。
それに、母の体重は30キロ台。圧迫すれば間違いなく肋骨は折れるだろう。
母にとって心肺蘇生はあまり意味をなさない。意味があるとすれば、こちら側が「最善を尽くした」ように見えるだけなのではなかろうか。
あまり悩む要素のない決断ではあったが、これを私1人で決めるのはかなりの勇気がいる。親の生死を私が決めてしまうような感じがして怖かった。(もちろん違うけど。)母はこのことに意思表示ができないし、今まで話題にのぼったことはなかったので、「母ならこっちの選択をするだろう」という手がかりもなかった。
とりあえず、「しない」という選択を主治医に伝えつつ、今夜中に夫と妹に意見を聞き、変更がある場合は翌日主治医へ電話することにした。
夜の仕事は休ませてもらった。
話し合った結果としては変わりなかったが、入院の翌日にこんなことがあると心臓に悪い。
毎日何かしらのエピソードがある。
それを受け取り、消化し、日常生活をまわしていくのは結構な体力がいる。
この頃の私は、ちょっと時間が空けば速攻でベッドに横たわっていた。