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脳がバグっている(母の難病#5)
【9月27日】
母の誕生日のこの日、妹と面会に行った。
前日、主治医からの呼び出し後にも面会していたが、看護師さんからは「夜は大変でしたが、日中はご飯も食べられていますし、落ち着いてはいますよ」と言われていた。
食事の全てのものにとろみがついていて、飲み込みやすくしているとのこと。ただ、ゴクゴクと水分を飲むことはできないようだった。
母はアイスとヨーグルトが好きだ。
明日誕生日だから差し入れしたら食べさせてもらえるかと聞いてみると、
「アイスよりはヨーグルトの方がいい」とのこと。
好きで食べていたヨーグルトを3種類ほど買って持っていった。
看護師さんが私たちを病室へ案内する途中で、
「お母さん、今日は食事だと認識していないのかお口を開けてくれなくて。ご飯が食べられていないんです。なので、今日から点滴を入れています。」
おおーー…。もう食べられなくなったのか。
こんなに早い展開になるとは。
「そうでしたか。では持って帰ります」
と伝えると、看護師さんは、
「ちょっとだけでも味わえるときがあるかもしれないので、冷蔵庫に入れておいていただけますか?」
と言ってくれた。
妹と相談し、厳選したヨーグルトを1個冷蔵庫に入れておいた。
こんなことになるなら、早いうちにアイスも食べさせてあげればよかった、と後悔した。でも、母は糖尿病を患っているし、インスリン注射が必要になる境目をさまよっていたので、母が大好きなお菓子類や果物は、なかなか差し入れできなかった。
(今までお世話になっていた施設では医療行為ができないため、注射が必要になるのは一大事だった)
いろんな思いが頭を巡りながら、母に話しかける。
まだ私のことは認識しており、
「みっきーだよ」と言えば、
「あー、みっきー」と感情を乗せて話す。
ただ、妹のことは分からない様子。妹の名前は反復しなかった。
私「今日は誕生日だね」
母「誰の?」
私「お母さんのだよ。今日は9月27日」
母「6月?」
私「ううん、9月」
今日一番長く続いた会話だった。
前日もこの日も、母はまるで多重人格かのように3つの声のトーンで話をした。
中間の、ちょっと力が抜けた聞き覚えのあるトーンは、いつもの母。
高いトーンで話すときは、擬音を繰り返したりひとり言を話したりしている。
低い声の時は、悪口を呟く。高い声と低い声で話しているときは、こちらの問いかけは全く聞こえていないようだった。
脳がすっかりバグっている。そんな印象をもった。
そんな様子を15分ほど眺め、
「ヨーグルトを看護師さんに預けたから、後で食べてね。」
と母に伝え、部屋を後にした。
面会時間は、15時〜17時の中で15分間と決まっている。
母の1人劇場を見ていると15分はあっという間であった。