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パリ逍遥遊 クラリネットは壊れたか?

「クラリネットを壊しちゃった」は、誰もが子供の頃に聞いたことがある童謡だろう。大人になって、我が子が「パパからもらったクラ~リネット♪」と歌っているのを聞くと、超ロングセラーだな~と改めて感心する。

この童謡、途中で変な歌詞になることを、みなさん覚えているだろうか?以下のフレーズだ。
「オー パッキャラマード! パッキャラマード! パーオ パーオ パパパ!」

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パパからもらったクラリネットが壊れて、子供が慌てている心境を表現していて、シックリくるフレーズだが、よくよく考えてみると「オーパッキャラマード!」ってなんだ?

我が子が突然「パッキャラマード」とか「パーオパパパ」とか言い出したら、親としては心配だ。クラリネットどころか、我が子の精神が壊れたのではないか?なんて思っちゃったりして。
話は逸れるが、我が子はカトリック系の幼稚園に通っており、夕食を食べるときに突然「父と子と聖霊の名において・・・(略)・・・いただきます」とか言って十字を切り出したときは、びっくりした。

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話を戻して、実はこのフレーズ、フランス語なのだ。
クラリネットの歌は、元々はフランス語圏の童謡で歌詞の内容はほぼ同じ。原曲および日本語訳は以下の通りで、太字部分が「オー パッキャラマド」部分だ。

J'ai perdu le do de ma clarinette,
(クラリネットのドの音が出ない)
J'ai perdu le do de ma clarinette,
(クラリネットのドの音が出ない)
Ah ! si papa il savait ça, tralala,
(ああ、もしパパがこの事を知ったら、トラララ(不信を表す擬音))
Ah ! si papa il savait ça, tralala,
(ああ、もしパパがこの事を知ったら、トラララ)
Il dirait: Ohé !
(パパは「おい!」と言うだろう)
Il dirait: Ohé !
(パパは「おい!」と言うだろう)
Tu n' connais pas la cadence,
(お前はリズムを知らないのか)
Tu n' sais pas comment l'on danse,
(お前はどうやって踊るのかを知らないのか)
Tu n' sais pas danser
(お前は踊り方を知らないのか)
Au pas cadencé!
(歩調をとって!)
Au pas, camarade, au pas, camarade,
Au pas, au pas, au pas
Au pas, camarade, au pas, camarade,
Au pas, au pas, au pas, au pas, au pas.

太字のフランス語を無理矢理カタカナにすると、
「オーパ カラマード オーパ カラマード オーパ オーパ オーパ、
オーパ カラマード オーパ カラマード オーパ オーパ オーパ」
と言ったところ。日本語版は、聞こえた通りの「オー パッキャラマード」にしたのだろう。

ちなみに、Au pas, camaradeのうち、Auは前置詞で、pasは足とか歩み、camaradeは仲間とか友達で、全体で「友よ一歩一歩あるいて行こう」みたいな意味だ。もともと行進曲だったらしいので、こんな歌詞なんだろう。

日本語の童謡として直訳すると、パパからもらったクラリネットが壊れた直後に、「友よ一歩一歩あるいて行こう」だとつながらないので、ここは原曲通りにしたと想像できる。慌てた感じのカタカナで面白いしね。

ちなみに、フランス語の曲のタイトルはJ'ai perdu le do de ma clarinetteで、「僕のクラリネットのドが失われた」=「クラリネットのドの音が出ない」と言った意味で、歌詞の他の部分を見てもクラリネットは壊れていない。英語版も、I have lost the Doh’of my clarinetでフランス語版と同じ。

「ドの音が出ない」だと、演奏者が下手だから音が出ないのか、クラリネットが壊れているから音が出ないのかよくわからないから、日本語版はクラリネットが壊れたことにしたのかな~?と、お父さん(私)がフランス語を勉強し、子供がお父さんと同じ童謡を歌ったことにより、時間・空間を経て訳者の苦労が実感できる。

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