「アメリカ最後の日 シビルウォー」 観るには覚悟がいる映画
恐ろしい映画を観た。
中1の娘が観たいというので観に行った。おそらくYouTubeで予告編を見たのだろう。娘が観たいと言うのは「名探偵コナン」シリーズ以来だ。
『アメリカ最後の日 シビルウォー』。
例によって大阪ステーションシネマまで歩いていく。
映画が始まった。舞台は現代のニューヨークだ。てっきり南北戦争の映画だと思っていたので、あれっ?と思ったが、現代から過去へと遡る手法なのだろう。
10分ほど経っても1860年代にならないので、やっと現代、もしくは近未来を描いた映画だと気づいた。
南北戦争は英語ではThe civil warと定冠詞がつくが、この映画の原題はCivil war。
大統領に反発した19の州が連邦政府から離脱。テキサスとカリフォルニアは西部同盟を結び、政府軍との間で内戦が勃発する。
三人のベテランジャーナリストとジャーナリスト志望の四人が大統領にインタビューするためにニューヨークからワシントンD.C.まで車で出発。紛争地を迂回しながら進んでいき、ガソリンスタンドを見つける。そこには銃で武装した男たちが座っていた。
「どうする?」
「機会があるときに入れといたほうがいい」
ここからだ。ここからじわじわと緊張感と恐怖感が増していく。
そこで彼らはあるものを見る。
レビューに「観る者はまるで戦場に放り込められた気分になる」とあったが、その通りだ。
何とか給油して走っていると、バックミラーに猛スピードで走ってくる車が見える。
「スピードを落として先に行かせよう」
映画を観るということは画面と対峙することだ。少なくともこの映画はそうだ。
逃げられない。
パニック障害の人が感じる死の恐怖とはこんなものだろうか。
ここで人間の狂気が剥き出しになる。非常な恐ろしさを映像を通じてわれわれは体験することになる。
戦場カメラマンは現場で悲惨なものを目にする。タフでないとやっていけないが、それでも精神をやられる人はいる。
鴨志田穣さんは極度のストレスでアルコール依存症になった。
鑑賞中のある時点で、ある歌が脳内をリフレインする。
「俺は平和の国ニッポンで命の歌を叫んでる
メシ食って酒飲んで
のほほんとして危うい歌を叫んでる
これでええんか
俺ら人の子や
カンボジアの子も人の子や
みんなみんな人の子や
これでええんか
これでええんか
ええはずないやろが!」
「BANG」 叫ぶ詩人の会
ホワイトハウス付近での市街戦はこれ以上のものはない、と思うほどのリアルさだった。
命乞いする大統領(トランプ氏を示唆しているのは明白)を射殺。
そしてエンディングで流れるのはNYエレクトロパンクのスーサイドが歌う「Dream,baby,dream」。
文字通り、「夢よ、ベイビー」を連呼する歌詞はアイロニカルだが、コミカルな曲調に救われる。
外に出る。雑踏がまぶしい。現実だ。平和がいい。
娘はトラウマになるかもと危惧したが、「エグかったけどアメリカや戦争のことがわかってよかった」そうだ。