ケアンズへの道12
アーミーダックは米軍の水陸両用車であり、第二次世界大戦で使われた。全長8メートル、50人ほど乗り込むことができる。男性が戦場に行ってしまったので工場で女性が作ったらしい。
河川、沼、海に入るとスクリューを稼働させる。
陸路はガタガタと揺れる。前に座っていた白人の御婦人がバナナを高々と挙げた。
「私、これからバナナ食べるわ」
とみんなに宣言していると思ったが(そんなわけねえだろ)、「これどなたの?」と聞いている。
あ、ビニール袋に入れていたバナナが振動で転がっていったのだ。お礼を言って受け取る。
今度は別の人がりんごを掲げた。
それも私のです。
ああ、恥ずかしい。あとでビニール袋を点検すると、ペットボトルのオレンジジュースが無くなっていた。それは発見できなかったんたろう。
沼を一周する。USJのジョーズみたいだ。
上陸すると、ある場所に停止して老練という言葉がピッタリするようなドライバーが自生の植物を説明する。
アボリジニが悪魔のような、と恐れるギンピギンピ。
英語名ではスティンギング・ツリー、またはThe suicide plantという恐ろしい名前もある。見た目はどこにでもある葉っぱなのだが、刺毛に触わっただけでその毒性によって痛みは少なくても半年続くそうだ。
「葉や枝に触れると、中空の二酸化ケイ素の尖端を持つ毛が皮膚を突き刺す。この刺毛は忌まわしい程の苦痛を与える。アーニー・ライダー (Ernie Rider)は、1963年にこの植物の葉で顔と胴を負傷したが、その苦しみについて、彼は「2から3日間、その痛みはほぼ耐えられないほどのものであった。私は働くことも眠ることもできず、2週間かそれ以上もひどい痛みに襲われた。この苦痛は2年間もの間続き、冷たいシャワーを浴びた時には、いまだに毎回痛みに襲われる。これに匹敵するものはない。他の痛みと
比べても10倍以上は酷いものだ」と述べている」
Wikipediaより
アーニー・ライダーは植物学者
沖縄でツアーに参加した時に教えてもらったが、観葉植物として人気のクワズイモは本来食わずイモと書き、葉をかじると口中の痺れ、下痢、嘔吐などの食中毒症状が発症するそうだ。
しかしギンピギンピの毒性には到底敵わない。
とにかく世界一の猛毒であるらしい。
ジャングルツアーが終わるとお兄さんが
「いろいろ教わったので、これでジャングルでも生き延びれますね」
と言うと、皆んな笑う。
事前にお兄さんが娘に「コアラを抱っこしたいですか」と聞いていたが、0.5秒で「はい!」
実は動物保護の観点からオーストラリア政府は来年にはコアラの抱っこを禁止する動きがあり、今年が最後だろうという。
土産物売り場の奥にあるドアを開けると、そこはコアラとの抱っこ場所。なんだか秘密基地みたいだ。
コアラにストレスを与えないように抱き方をオーストラリア人スタッフがレクチャー。
娘が抱っこしようとするが、なぜかうまくいかない。コアラは6キロあるので娘には重いと判断したのだろう。お兄さんが「お父さんが代わりに抱っこしてください」。
仕方なく抱っこする。結構ケモノ臭いし、Tシャツに爪を立てるので痛い。娘がコアラの背中を撫でるというポーズで写真。一生に一度の体験は私が主役になってしまった。
あとで娘が言うには「重くなかったで。コアラが抱っこを嫌がってん」
写真は娘が暗い顔で背中を撫でている。
さぞかし気落ちしたのではないかと思ったが、
「あそこでもし私がコアラを落としてたら国際問題になってたで」
と笑っていた。