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衆議院議員選挙の開票見学

「開票所で票は操作されている」「記入したものが書き換えられている」とは選挙がある度に出回る定番ともいえる偽誤情報ですが、そもそも開票はどのように行われるのだろう、と疑問を持ったので、2024年10月27日執行の衆議院議員選挙の開票所(東京13区)へ見学に行ってきました。(見学者を「参観人(開票を参観する人)」と呼びます)。


1)わくわくしながら開票所へ

東京13区の開票所見学についての情報は、WEB上では確認することができなかった。選挙区によって案内があるところとないところがあるようだ。他の選挙区で開票所見学ができるのに東京13区でできないとは考えにくい。一抹の不安を覚えながらも、20時の投票終了時刻を待って開票所へ向かう。
開票所併設の駐車場近くにはスーツ姿の男性が3名ほど。投票箱が到着するのを待っているようだった。

開票所入口

開票が行われるであろう建物に入り、係の方に「見学の受付はどこか」と聞くと、「え?見学ですか?」と何も知らない様子。少し離れたところにいた係の方が大きな声で、見学者は入口が違うことを教えてくれた。係の方でも見学ができることを知らないのだろうか。少し不安を抱きつつ、見学者用の入口に向かう。見学者のことを「参観人」と呼ぶことをここで知る。

全く目立たない場所にある参観人出入口
たくさんの人が来ることが想定されていないであろうことがわかる

2)いざ受付

受付では名前・フリガナ・住所・生年月日を紙に記入し、参観人になるための申請をする。係の方がデジタル端末で私が参観人資格のある人物であるかどうかを調べてくれる。そもそも参観人には、自分が投票できる選挙区内の開票所でしかなれないらしい。(公職選挙法 第六十九条
無事に許可をいただき、「参観人」という名札のようなものを首から下げて参観人席へ向かう。ただ、参観人席は狭く、そして人もその時点では9名(NHKさん3名、共同さん2名、私を含む一般人4名)しかいなかった。いかに参観人になることがマイナーであるかを実感する。

3)なかなか開票が始まらない

国旗と足立区の区旗、「衆議院議員選挙 足立区開票区開票所」のボードが壇上に大きく掲げられた開票所には、続々と投票箱が運び込まれ並べられていく。不思議なことに投票箱を運んでいる方は必ず小走りである。フロアにはおおよそ470名の方が待機しており、開票開始の合図を静かに待っている。

4)ようやく開票開始宣言

投票終了時刻から約1時間後の20時54分、投票箱の鍵開けが行われ(投票箱がすべて揃ってから一斉に行われる)、21時3分開票開始宣言がされた。この時にはすでに報道各社で当確が発表されていた。まだ現場では投票箱も開けていないというのに。世論調査と出口調査の精度について考える。
開票作業はスムーズかつ非常に効率よく無駄なく行われているように見えた。このオペレーションを考えた人はすごいし、黙々と作業をする人もすごい。票を数える作業はかなりの重労働であると思う。
それと同時に、この環境下で大規模な不正を行うことはほとんど不可能であるということを確信した。偽誤情報のネタでたびたび登場する「ムサシ」が開発製造する「投票用紙読取分類機」と思われるシルエットの機械もフロアにあった。ただ、この分類機で仕分けた後で人が一枚一枚目視で確認しているので、もし仮に分類機で何か不正が行われたとしても、それは後の工程で容易にばれてしまうことが想像できた。(分類機で記述の書き換えが行われている、という偽誤情報もあるが、これも全くできそうにない)。

5)双眼鏡での票読み

開票が開始された直後くらいに記者さんの数が増えてきた。皆、手に双眼鏡を持っている。最終的に9名くらいの記者さんがいたように思う。社によって対応は様ざまで、フロアの束を1つずつ確認している社もあれば、最後の工程で数え終わった束だけを確認しているような社もあったように見受けられた。
この日は22時15分に小選挙区についての開票途中経過を、22時30分に比例代表の開票途中経過をアナウンスし、壁にその結果を張り出すということをしていた。それにも関わらず、アナウンスを待たず自らカウントしているのを見ると、いかに早く確実な開票結果を出すことを重視しているかがわかる。大変な仕事だ。

22時30分の発表を持って、私はその場を後にしたが、私以外の一般の参観人はすでに全員がその場から離れていた。私が離れた後、参観人は記者さんのみになった。

6)参観人になってみて

民主主義国家で投票という行為をするのであれば、一度くらいは参観人としてその開票現場を見学するのは悪くないように思う。そのうちにWEB投票になるのかもしれないが、こうして票を数えて選挙結果を発表する営みによって民主主義が成り立っているのだと感じることができるからである。
私はこれを「主権者教育」の一部として実施したら良いのではと考え、選挙管理委員会の方であろう受付の方に、選挙権を持たない子どもは参観人である両親の付き添いのもと、参観人席に入ることはできるのか、と質問したが、「参観人は選挙権を持っている人しかなれないので、参観人である保護者の付き添いがあったとしてもできない」との回答を得た。これは少しもったいないことだと思う。民主主義と投票することの大切さを実感するまたとない機会なのに。
そこで私は18歳で選挙権を得、初めての投票の後に参観人として開票所の見学をすることをお勧めしたい。それは忘れられない投票デビューとなるはずだ。
そうでない大人も次回の選挙で参観人として見学してみてはいかがだろうか。開票所は一覧で公開されているので誰でも確認することができる。

7)関係リンク一覧

▼令和6年10月27日執行 衆議院議員選挙(足立区投・開票分) 第13区小選挙区投票状況(最終確定)
⇒この表も参観人席の近くに張り出されていた

▼(投票所の)「18歳からの投票立会人」をやってみませんか?
⇒足立区では18~29歳の人は投票立会人になることができる

▼投票へ行こう!
⇒東京都選挙管理委員会の主権者教育の取り組み

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