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Week3-2)ゲームデザインを授業に取り入れる方法
MediaSmartsのオンライン講座「Making Media Across the Curriculum」、三週目のゲストスピーカーはアメリカで教師をしているKathleen Mercury氏。彼からゲームデザインを授業に取り入れる方法について動画でレクチャーがありました。
その内容を以下にまとめます。
1.ゲームデザインとは何か、なぜこの授業をやるのか
ゲームデザインは生徒がプロトタイプを作成、テストし、フィードバックをもらい修正するという流れをゲームが完成するまで繰り返し行うことを指す。
ゲームデザインの過程で、分析力・実践力・創造力を学ぶことができる。また、ゲームのプレイ・テスト・フィードバックを他者と一緒に行うことは良い経験になる。
2.ゲームリテラシーとは
ゲームリテラシーとは、ゲームデザインの世界で働くための基本的な概念、実践、参考文献を知っていることを指す。
ボードゲームデザインの授業を行う際は、広く出回っているボードゲームはかなり偏っており、モノポリーに類似するものが多いため、生徒がこれらをボードゲームだと考える傾向があることを心に留めておく必要がある。
実際は、ボードゲームには様々な種類やテーマのものがあり、それらを幅広くプレーすることでゲームリテラシーを高めることができる。ゲームリテラシーは基本を越えたゲームをデザインするためにも必要なものである。
3.ゲームの構成要素
ゲームの要素、特にゲームごとのコアダイナミックの違いを理解することが大切。コアダイナミックス、つまりプレイヤーが勝つため/ゴールを達成するために何をしなければいけないのか、には多くの種類がある。
◆コアダイナミックのカテゴリと主なゲーム例
生徒がコアダイナミックを選択したり、教師が学習目標に合ったコアダイナミックを生徒に選択することで、生徒のゲームには、ゲームを使ってモデル化してもらいたいことが実際に反映される。
◆「ゲームの攻略法」の種類
昔ながらのボードゲームは以下のカテゴリが使われていることが多い。
・転がり動く(Roll and Move 例:Clue, Monopoly, etc)
・収集(Set Collection 例:Go Fish!, Gin/Rummy, Monopoly)
・サイコロを転がす(Dice Rolling 例:Yahtzee, Risk)
昔ながらの攻略法以外にも様々な種類があるので試してみると良い。
・集配(Pick Up and Deliver)
・エリアコントロール(Area Control)
・同時アクション選択(Simultaneous Action Selection)
・運試し(Push Your Luck)
・ルート/ネットワーク構築(Route/Network Building)
・エリア移動(Area Movement)
生徒がより多くのゲームリテラシーを持っていればいるほど、より良いゲームを作ることができる。
4.授業における、良い/悪いゲームデザイン
◆推奨されるゲームデザイン
① 2~4人でプレーできる
② プレイヤーの選択を重視した承認済みのゲームメカニックの使用
③ 運任せの要素を入れる場合は、控えめにするか、最小限の効果しか持たないようにする
④ 豆知識やクイズなどの質問は入れない
◆推奨しないゲームデザイン
① プレイヤーの排除、順番抜かし、初めに戻る、「チャンスカード」などの要素、パワーアップの要素
② スポーツや戦争をテーマにしたもの(すでに多くデザインされている)
③ 学校に不適切である武器の使用、プレイヤー同士の暴力的戦い
④ 殺人(私があなたを殴ったらあなたが私を殴り返すというような対立ではなく、生徒にはもっと創造的な選択を促したい)
5.ゲームデザインの6ステップ
① ゲームリテラシーを学ぶためにゲームをする
生徒は、見本になるようなゲームをプレーすることで、簡単に楽しくゲームを学ぶことができる。
② ゲームのシーンやストーリーを選ぶ
③ ゲームの仕組みを掘り下げる
様々なものを試し、プレイヤーが楽しいだけではく、作っていても楽しいものにしていく。生徒がよくある、モノポリーのようなレースゲームの制作を企画するかもしれない。その場合は、生徒の制作しているゲームのシーンや世界観に合った新しい要素を追加するように促し、ゲームの構成に集中させること。
④ プロトタイプの作成
時間とお金をかけずに簡単に作成しはじめ、改良を重ねること。時間をかけすぎると生徒は変更をすることに抵抗を示してしまう。
⑤ プレーテスト
グループでプレーし、お互いにフィードバックをする。良いところ、改善の必要があるところ、どんな新しいアイディアを追加するべきか、どんな質問があるか、一番楽しかった瞬間はどこか、など。この過程はとても意味のあるもので、生徒は最初は自分のゲームを披露することに緊張するが、次第に自分のゲームをテストしたい、フィードバックをもらいたい、という気持ちに変わっていく。
⑥ 教師からのフィードバック
最低でも1回はゲームデザインの過程でフィードバックをし、生徒がそのフィードバックをもとに変更する機会を作る。
6.クラスでゲームデザインをする方法
全く新しいゲームを作ろうとせず、知っていることから始めることもできる。設定したゴールに従って、既存のゲームに手を加えるのだ。
そもそもゲームは生徒に論理的思考を要求したり、新しい視点を与えるものであって、意味のない時間潰しのようなものをゲームとは呼ばない。そのようなゲームとして未完成なものをクラスで改良していくというのも良い。この活動は実際にゲームを作ることはしないが、とても意味のあるものになる。
7.ゲームデザインを教えるにあたってのアドバイス
◆授業
・完璧を求めないこと
・教師はゲームデザインの専門家ではなく、生徒の制作過程を支援するコーチとしてかかわる(生徒の話を聞く、質問をする、具体的な提案と励ましを行う、これから起こるかもしれない問題を共有する)
◆評価
・ゲームの良し悪しでの評価ではなく、測定可能な要素と制作したゲームのフィードバックを行う
・プレーテストからどんな修正を行ったか、などプロセスを重視する
・制作過程でどのようなスキルや能力が身に付いたかを見る
◆材料
・工作で使用するような多種多様なものを用意する(小さく安価で耐久性の備わっているものを大量に
・Googleドキュメント・スプレッドシート、イラストレーター、フォトショップなども使用でできるが、無理に使用する必要はない。生徒が学び考えることが大切
◆心構え
完璧ではない生徒の制作を受け入れること、生徒の成功と少しずつの進歩を見守ること
このレクチャーを受けて
多くの子どもはゲームをすることが好きなので、ボードゲーム制作に楽しく取り組むだろう。ゲームの要素などを学習した後には、学校外でプレーするゲームを分析し始めるという生徒もいるかもしれない。身近なゲームについて学び取り組みを行うことは生徒の知的好奇心を刺激し、Hard Funな取り組みとなるのだと思う。
冒頭イラスト:イラストAC /文中の図:筆者作成