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12 訪問リハビリの日常【老々介護】

訪問リハビリで時折、目にするのが、90代の旦那様を80代の奥様が介護する「老々介護」の光景です。90代の方を70代の子どもが介護していることもあります。

90代の利用者様が「おーい、おーい。」と奥様を呼び、「ここが汚れている。」とか「腹が減った。食べ物を持ってきて。」などと奥様に伝え、奥様が持ってきた食事に対して「これじゃ無い。」と言ったり、文句を言いながら食べていることがあります。90代の利用者様は「身体がツラい。動くのがしんどい。」と言われますが、私にはすべての家事をこなしながら、介護を続ける奥様もかなりしんどそうに見えます。

リハビリに伺った際、奥様に介護負担についてお聞きすると、「私も体力が落ちてきて、腰や肩が痛い。それでも夫の介護をし、家事を全部こなさなければならない。」と、とても辛そうに話されます。私は90代の利用者様に対し、自分のことはできるだけ自分で行い、奥様の負担を減らすよう伝えることがありますが、「あんたにはこの辛さが分からないからそんなことを言うんだ。」と言われてしまいます。妻より自分の方が高齢であることや、家父長制の価値観からそのように言われるのかもしれません。

そして、リハビリの内容は「身体がしんどいから運動なんてできん。マッサージを頼むよ。」と希望されます。マッサージだけでは、筋力や体力がつかず、動くのがますます大変になっていくこともお伝えしますが、90代の利用者様に納得していただくのは難しいです。「身体がツラいからリハビリを頼んでいるのに、運動なんて出来るわけないだろう。」と運動のリハビリは断られてしまいます。

同じような状況の方を他にも見る方があり、特に昔の世代では家事や育児は女性の役割とされ、男性は外で働くという価値観が強くありました。そのため、定年後も家事は妻の仕事という認識のまま、旦那様はテレビの前に座っているだけ、という状況が少なくありません。そして、男性側は体力が落ちて、動けなくなってきてしまうと言う、悪循環、、、。

「体がしんどいからリハビリを」と訪問リハビリを利用しても、実際には「今日はしんどいからマッサージして」と言われることが多く、運動の重要性を伝えても、なかなか理解されず、それ以上のことを伝えるとご立腹されてしまう方もいるため、それ以上言うことはできません。結果として、いつもマッサージだけで終わることがあります。そして、「リハビリやっても全然良くならん。」と言われてしまう始末。先ほども記載しましたが、マッサージだけでは、筋力や体力の向上は認めず、動けるようにはなりません。

しかし、90代でも外を数十分歩ける方や、訪問リハビリを通じて室内を一人で歩けるようになる方もいらっしゃいます。加齢は身体機能や日常生活動作を低下させる要因の一つに過ぎません。若くても病気で歩けなくなる人がいる一方で、高齢でも元気に活動する方もいます。「年齢だから」と諦めるのではなく、リハビリを通じて最後まで自分らしく生きるお手伝いをしたいと感じています。

私自身も、なるべく元気に働き続けられるよう、心身ともに鍛え続けていけたらと思っています。

私自身の体験をもとにしていますが、内容はフィクションであり、登場人物も架空の人です。


【一言メモ】
老老介護とは、高齢者が高齢者の介護をすることです。今は四人に一人が高齢者となっており、高齢化が問題となっています。主に、配偶者が介護することが多いですが、次に子どもとなっています。


同居の中の主な介護者は性別で見ると、女性が66%とかなり女性の比率が高いことが分かります。


健康長寿ネットから引用

最初は「最後まで家でみてあげたい。」と思われて、献身的に介護をしていても、何ヶ月も何年も介護が続くと、精神的にも身体的にも疲れてしまい、泣きながら介護をされているかたもいらっしゃいます。健康寿命を伸ばし、本人も介護者も幸せになれるよう、関わっていけたらと思います。

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