day9ー自閉症者の脳は健常者とどのように異なるのか
Padmanabhan, A., Lynch, C. J., Schaer, M., & Menon, V. (2017). The default mode network in autism. Biological Psychiatry: Cognitive Neuroscience and Neuroimaging, 2(6), 476-486.
自閉症者のデフォルト・モード・ネットワークについてのレビュー論文
前提知識
自閉症(Autism Spectrum Disorder, ASD)は社会的コミュニケーション、インタラクションの障害を特徴とします。
デフォルトモードネットワーク(Default Mode Network, DMN)は安静時の脳活動を形成するネットワークと言われています。ASD者ではこのネットワークが健常(Typically Developed, TD)者と異なることが知られています。
まとめ
DMNは前内側前頭前野(aMPFC)、背内側前頭前野(dMPFC)、前帯状皮質(ACC)、を中心とし、海馬体(HF+)、海馬(HIP)、外側側頭野(LTC)、後下頭頂小葉(plPL)、海馬傍回(PHC)、脳梁膨大後部皮質(Rsp)、上側頭回(supF)、側頭極(TempP, TP)、側頭頭頂接合部(TPJ)、腹内側前頭前野(vMPFC)で構成される。ASD者の障害とされる「社会的機能」、「メンタライゼーション」、「自己参照」、「心の理論」に関連する脳領域は、DMNに関連する脳領域に類似している。
・PCCの過結合が、ASD児の社会的コミュニケーション障害を予測する。
・ASD児はPCCと脳梁膨大後部皮質(RSC)の過結合が見られる一方、楔前部との乏しい結合が見られる。
・年齢が上がるに連れ、DMNはバラバラな状態から1つのまとまった状態に近づく。ASD者はまとまりにくい。
所感
この分野は発展が著しく、特にresting state functional MRIによって脳の部位間結合はほとんど特定されたんじゃないかと思う。一方でASDは定義が「社会的」、「医学的」背景を持つため明確ではなく、同じ傾向が全員に当てはまるのかというとそうではない気がする。つまり、この研究で脳機能と障害の関係が明らかになったとして、それを個々の支援につなげることは難しい(もちろんこのような研究の積み重ねによって、より良い薬の開発や、より正確な早期診断が実現していく)。
方法論の懸念として、ASD児がちゃんとデフォルト・モードに入ったか、どう判断するのか疑問。