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京都の劇団、「劇団三毛猫座」って?“サブスク朗読劇”を振り返る第5回

はじめに

劇団三毛猫座の過去公演をご紹介する連載、第5回。
執筆は永久です。
劇団三毛猫座には2021年より参加。劇団員の中で唯一芸大以外の出身で、故郷は富山、役者と思わせて脚本・執筆活動を嗜む、薄いヴェールどころか遮光カーテンに包まれた人物像であります。
こちらではまだ舞台に立ったことのない私が、演者として出演した数少ない作品について、思い出をつらつらと綴りたいと思います。
やわらかな春の夜のお供にどうぞ。

サブスク朗読劇って?

サブスクリプション、略してサブスク。初めて知りました。
“サブスクする”朗読って何?と気になったそちらのあなた。
まずはこちらの記事をご覧下さいませ。

「言葉があなたの生活の彩りに」という謳い文句がとても好きです。
子供の頃、鏡台の前で母が化粧をする傍ら、ラジオがずっと流れていました。
今日の天気、交通情報、大なり小なりの世の中のニュース。
注意深く聴き入るわけではなく、なんとなく生活の一部になっていた音。
それを朗読で体感出来るなんて、と企画を聞いた時は驚きました。同時に、普段から朗読に携わる身として嬉しくなったのを覚えています。
朗読がある生活。良いですよね、とても。

※現在、サブスク媒体での配信は終了し、劇団三毛猫座のBASEにて販売しております。リンクはこちら。他にもお洒落な公演グッズがあるよ!

sample of wor[l]d #1

セカイ(世界、英: World)は人間から視認できる空間、土地、国、地球などの総称である。
選択したこと、取りこぼしたこと。
忘れること、覚えていること。
生きる感覚、死にゆく感覚。

私たちは、視認できないものを言葉として採取し、培養し、仮想実験を行う。
テキストを音楽的に表現する、詩のオムニバスアルバム。

「ことばの組曲 1.夜」「くじらの昇る海底」に次ぐ、劇団三毛猫座のポエトリーリーディング最新作。

私が初めて劇団三毛猫座の公演を観たのは、「ことばの組曲 1.夜」でした。
その作風に似て、サブスク朗読劇の中でも特に劇団三毛猫座らしさの濃い作品だったように思います。
真っ白な部屋の中で、試験管の中に言葉を採取して、変化をじっと観察しているイメージ。
タイトルの「word(言葉)」と「world(世界)」をかけているのも洒落ていてなんともたまらないったら、ないね!

「あの日は鮮やかな白」は、元劇団員のkaorikidさんの手でアニメーションにもなっております。
こちら、茨木映像芸術祭2022、西湘映画祭6th、東京神田神保町映画祭にて入賞し、続々と快挙を達成していきました。
kaorikidさんとあきらさんが琵琶湖にロケに行ったり、みんなで写真をかき集めたり、necoさんのおばあさまのお話を聞いたりと、今でも思い出深いです。

猫はかつての灰と青

「生まれたときから盲目だった私にとって、家族の声は、世界の道標だった」

目の見えない眞理と飼い猫のメアリー。メアリーが喋ることは、二人の間だけの秘密だ。
母と姉に守られて過ごす眞理にとっての世界は、家族のフレームの中。
全てを知っているようで、何も知らない。

そんなある日、ある出来事をきっかけに、眞理は部屋からメアリーと共に抜け出してしまう。
守られていることは、安全で、幸せで、時々、窮屈ーーー
猫と人とは手を取り合い、世界を選び取る。
劇団三毛猫座が送る、ファンタジックストーリー。

嬉し恥ずかし、初めて主演を務めさせてもらいました。
鳥籠を持つ手はあきらさん。この鳥籠、なかなかに重いので大変でした。(あきらさんが)
優しいのに、大切なのに、想い合うほど苦しくて窮屈で。
眞理だけじゃない、私たちの中にもある感情。
それでも人は、自分以外の誰かの手を取って生きてゆく。助け合うことが出来る。そう思わせてくれる、優しいお話でした。
個人的に猫派なので、猫が出て来るお話は総じて愛おしい。

ヘッドランプと夜の鋏

踏切の手前に置かれたボイスレコーダー。
そこへ引き寄せられるように集まった4人の人物。
いつしか文通のように、彼女たちはボイスレコーダーを通じて会話を始める。
「渡るか、留まるか。それが問題だと思う」
「この音声が聞かれるころには、ボクはもう生きていないでしょう」
「変化、変容、変節ーーー成長痛、って言葉をなんとはなしに思い出します」
「えーっと、あたしもなんか話したほうがいい感じ?」

踏切の向こうへ行くのは誰か。
代表作『アンドロイドは毒をも喰らう』に次ぐ、青春の痛みと決断の物語。

文通のようにボイスレコーダーを使う、という構成の作品。
録音していると、次の相手の言葉を待つ、実際にボイスレコーダーを交換しているような気持ちになりました。
独白でありながら、見も知らぬ誰かと繋がって、交信し、会話となる。
真夜中の踏切、最終電車、横切る電車はまるで深海を走っているようで、たまに遅くなった夜にその景色を眺めるのが好きでした。
そんな情景を思い描く、静かで、痛くて、でもその痛みが愛おしい。
ジャケットがいっとう好き!

終わりに

最後までご覧いただきありがとうございました。
そばに朗読がある生活、いかがでしょう?
今年は奥能登国際芸術祭に出演が決定しており、劇団として躍動的な年となりそうです。
次回の記事も公演も、どうぞお楽しみに!

永久

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