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すくいあげる日

どんな瞬間にもとどまることができない。
だからいつも慌てて、記号みたいな言葉を書きとめている。

完璧な夕暮れ、さえない日のコーヒー、冬の匂い。

ときどき光の粒みたいな瞬間に出会う。
とどまりたいと願わずにはいられない瞬間。
両手ですくおうとしても、指の隙間からこぼれ落ちてゆく。

そんな瞬間にあとどれだけ出会えるのだろう。
いつかここを去るとき、指の隙間からこぼれ落ちたもので、わたしたちが歩いた場所がきらきら光っていますように。

「すくいあげる日」序文より

はじめての本をつくりました。

2012年から2024年まで、20歳から32歳の12年間に綴った日記から、129の日記をすくいあげました。「秋の日」「満月の日」「さえない日」など、時系列ではなく、10の章にまとめています。

わたしにとっても、だれにとっても、お守りみたいな本になればいいなと思ってつくった、大切な一冊です。

装丁・ブックデザインは、デザイナーの水迫涼汰さんが担当しました。

表紙と裏表紙に無造作に散らばる光の粒は、夜空に浮かぶ星座のようにも見えます。各章の扉ページは、半透明の紙に白で印字しています。付属の紺色の背景紙を敷くと、文字がそっと浮かび上がります。

ゆっくり長く、届けていけたら嬉しいです。


『すくいあげる日』
初版第1刷発行:2024年12月8日

著者:草間柚佳
装丁:水迫涼汰
印刷:サンライズ

ページ数:87
1,500円(税込)

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