ある女性アスリートの引退/だいぶ昔の話だから時代的には有りかも知れないが……
みけ子が20代の頃だったから、もう大昔のことだ。1980年代の出来事だったと思う。
オリンピックの代表選手にも選ばれたことのある、日本でトップクラスの女性アスリートがいた。自分はあまりスポーツには興味がない方なので、TVのニュースかワイドショーで見ていたんだと思う。その女性アスリートの引退会見の様子が流れていた。
彼女は身体能力も優れていて素質も十分にある、努力家で将来を嘱望された人だった。オリンピックには二度三度と出場する人もいたから、彼女は年齢から言ってもまだ十分に活躍出来る人だった。
そんな女性アスリートの引退会見。集まった記者がフラッシュをたく中で、彼女の引退理由は「結婚」だった。当時のみけ子は見ていて
「ええええ〜😱」
って思ったよ。
彼女のその引退会見での言葉を今でも覚えている。「二足の草鞋をはけるタイプの人間ではないので、引退します」と彼女は言ったのだ。
人気も知名度も実力もその世界では第一人者である。今後も活躍しそうなのにどうして引退?どうして今結婚?TV画面を見ていた自分はやたらとモヤモヤイライラした気分になっちゃったよ。年齢的にもまだ若く十分活躍出来る人なのだ。
自分の可能性を信じて、アスリートとしての道をもっと先まで追求しないのか?これまで頑張って結果を残して来れたのに、その実績をかなぐり捨て結婚しちゃうのか?結婚することでこれまで取り組んでいることから逃避してしまうことにならない?取り組んでいたスポーツについてはもう見切っちゃうの?
これまでの実績や可能性をかなぐり捨てて結婚引退してしまうという彼女に対して、その時のみけ子は怒りに似た気持ちを抱いてTV画面を見つめていた気がする。
1980年代、女性はほとんど大多数が結婚して家庭に入り、職場を寿退職するなんてごく普通にある事だった。だけど彼女は、その辺にいる平凡な人間ではなかったのだ。あんなに実力も名声も未来もあったのに……。
その彼女のことを先日ふと思い出して、検索を掛けてみた。結婚後に表舞台には立たなかったが、2人の子の母になった後、しばらく指導者としてその競技に関わってはいたみたいだ。そしてまだ亡くなるには若すぎる、50代前半で鬼籍に入られていた。もう十数年前のことだったらしい。
彼女の本当の気持ちは他人には分からない。今となっては当時のことを想像することは出来るけれど、内心はどうだったのだろうか?思い残すことがない人生だったろうか?
みけ子ごときが、他人の生き方についてあれこれ言っても仕方のないことなんだけども。
↓蒔絵で扇面を描いた、漆塗りの蓋つき菓子器です。落ち着きのある、洗練された紋様が上品です。
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