この令和の時代に(わざわざ)着物を着るということ
先日、ほぼ7年ぶりくらいで着物を着ました。前回着たのが長女の高校卒業式と長男の中学入学式があった7年前でした。今回着たのは、長男の卒業式に出席するためでした。
↑本当はキチンとした場では女性は羽織を着ないのが正式とされます。私は羽織姿が好きなのであえて着ました。それに最近ことに寒いのがこたえます💦
私、成人式の時は洋服だったんです。成人式は9割以上が着物の時代でしたが(今もそんな感じかな?)皆んな着るから振袖ってどうも素直にそうする気持ちになれなかったんです、若い頃の私は。でもその後にアンティーク着物の魅力にどっぷりとハマってしまいました。そしてその後は何か特別な時は「絶対に着物」を貫き通しました。
着物を着る時の特別感や浮き立つような気持ちがたまりません。着物を着ると「オシャレっていいな♬」って本当に思います。
節目の時にシャキッと着物を着るのって、やはり特別な感じがします。4年前の長男の中学卒業式の時には同居中の認知症の父の介護があり、大雨が降ったこともあって着物は諦めました。何だか色々支度をしてまで着物を着る気力がなかった感じでした。今回の着物、あまりに久しぶりだったので着るかどうかかなり躊躇しました。着付けのコツどころを忘れてしまった感じもしてましたし、着物を着るのって結構体力も要るからです。(ホント最近、体力落ちてます💦)でもやはり着ることにして、クローゼットの奥に仕舞い込んでいた足袋や裾よけを探すところから始まりました(笑)
ハッキリ言って着物着るのって非常に面倒です。それでも着たい。そういう魅力が着物にはあるように思えます。
まずは肌着から履き物から身につける物が全く洋服とは違う。
足袋に草履、裾よけに襦袢、半襟付けて腰紐や伊達締め、帯に帯締め、羽織にも羽織ひも。髪型も普段通りではバランスが悪いから、着物に似合う髪型を作る。ここ最近白髪も染めてないので白髪に合う部分ウィッグを買いました。
一切を美容院にお任せって事も出来ますが、私はそうはしません。20代の時に着付けを習って一通り自分で着られますから。着付けを習ったのはたった3ヶ月です。その前は着物なんて触ったこともなかったのですが教室の先生は「3ヶ月習えば、鏡を見なくとも15分あれば着物を着られるようになりますよ❗️」とおっしゃいました。そして3ヶ月後、教室に通っていた全員が本当に15分で着付けできるようになったんです❣️←今は私はもう無理ですよ(笑)
長着は何にする?それに合わせる帯は?帯揚げ帯締め、せっかく誂えたんだから帯留は新しいのをつけよう。多少の着崩れやいい加減な帯結びも誤魔化せるので羽織を上に。髪飾りは以前淡水パールで作った櫛がいいかな。
そして着物の時の所作。これも洋服の時とはまるで違う動きをしないと、きれいに見えないし着崩れるんです。手足を大きく動かして歩いたら裾なんてすぐにバサバサ乱れるし、品のない動きに見えちゃいます。着物姿は目立つので、ソソと慎ましく美しく、と行きたいところです(気持ちだけでもね♪)
人それぞれ、着付けのやり方や流儀はあります。私の着付けは20代の時に習ったやり方を自分流に省略アレンジしたやり方です。その時に習った着付けでは、ウエストが細い人はタオルを巻き体型は出来るだけずん胴に。バストの出っ張りは目立たせない。体のデコボコはない方が着た時にきれいに見えます。(これ、あくまで自分が習ったところの着付けの基本的な考え方です。他にも色々やり方はあるかとは思います)
また、帯は作り帯にしちゃいました。ハサミを入れても惜しくない古着市で買った安い帯をラクにしめられるように作り替えました。高価な帯はそこまで出来ませんが、実用品として自分で着付けてってことを考えたら、それが最善であるとの考えに至りました。
↑2部式にした作り帯。後ろの部分。
そして帯締めは帯の真ん中ではなく、やや下にするとバランス的に見た目がスッキリ綺麗に見えます。
↑こちらが胴に巻き付ける部分です。
出来るだけ簡略化できる部分はしないと、とにかく着物は決まり事も制限も多く着ようとする気持ちが失せてしまいます。
作り帯について書きましたが、裾よけも私は市販のものは使わず、自分で手作りしました。少々風なんか吹いてきても脚が見えないように洋服用の裏地を「ウエストを紐で結ぶスカート」のように仕立て、ウエスト部分には共布の結び紐を付けました。色は自分がよく着る着物の色に合わせた、濃いめの藤色。市販品はただの白で色気ないです。
↑スカートタイプの裾よけとタオルで作った伊達巻き、そしてこれも手作りの帯板。帯板にも結び紐をつけて体に直接巻き付ける方法で身につけます。
肌襦袢は省略して広めに襟ぐりの空いた洋服用の下着と、パットなしのスポーツタイプのブラを身につけます。
↑コーリンベルト(紐部分がゴムの、襟元がはだけないように作った胸紐)は長着ではなく襦袢に。ゴムはゆるめに付けます。2本ある時は長着にも付けます。襟を抜く時、どうしても動くと元に戻っちゃうので、襦袢には少し背縫いの上の方に紐通しを付けています。↓
半襟はやや幅広めに見せます。柄のついた半襟も素敵ですよね。半襟の見せ幅を広くすると大正ロマン風、狭いとキリッとした現代的な感じの着付けになります。
私が習った着付け教室では、紐類はやたらとギュウギュウにきつく結ぶのではなく、目一杯きつくは帯締めだけ。次にきつめはお端折りを取るときの腰紐。あとは割合ゆったりです。この着付け方法は着ていても苦しくないのです。
着物の魅力は年齢や体型を選ばず長く着られる経済性にもあります。今回着た青い小紋の着物、実は私が20代の頃に買った、アンティークの着物です。京都の有名な古着のお店で、本当に素敵な着物が揃っていました。その中でお値段たったの1万円でした❗️(裏地がちょっと傷んでいたんです)裏を替えて洗い張りや仕立て直しを経て、もう35年も着続けています。なんと新婚旅行にまで着て行った着物です。
60歳になった今着てもおかしくないです。アンティークの着物は値段がリーズナブルでお洒落で、もう言うことなしなんです。今回身につけた着物は全て以前からの持ち物ですし着付けも自前だったので、今回着物を着るにあたって新しく買ったものは部分ヘアピースの1980円だけでした(笑)
ただ今の方の体格だとアンティークの着物はちょっと丈や裄丈(ゆきたけ/首の付け根に当たる部分から、肩を通って袖口までの長さ)が短いかなぁ。
↑27年前のお正月の着物の写真です。縞お召に刺繍を施した長着です。この着物は今も大好きで大切にしています。草履はこの時身につけているアイテムの中で一番高価で買う時はまさに「清水の舞台」でした。もう今はお草履はこれ1足だけです。京都祇園ない藤製。
祇園ない藤はこちらの記事でも紹介しています。
着付けも準備も面倒で、身体の動きも若干の制限がある。それでも時間をかけても疲れても、わざわざ着たい特別な感じが着物にはあります。
今はゆかたでも今風のアレンジがなされていたり、小さい子供向けのものなどフリルが付いたりミニのゆかたがあったり。帽子を合わせたり草履ではなく靴を履く人もいますね。(好き嫌いの好みはあるでしょうが)そういったちょっとずつの変化が着物をこれからも発展させて行くのでしょう。時代や流行に合わせた変化は着物が着る物として生きている証拠です。決まりごとに縛られるばかりだと、つまらないし着る人も少なくなってしまうと思います。
古い時代の着物を手にすると、その時代の女性の着物やオシャレにかける強い憧れや思いをひしひしと感じます。そんな時代の女性たちの情熱を多少なりとも受け継いで大切にしていけたら、と思います。
平和な時代に優雅に華やかに着物のおしゃれを楽しむ。そういう世の中を私たち一人ひとりの気持ちや力で作っていかねばなりませんね。