カスティヨン04/サンテミリオン村歩き#56
https://www.youtube.com/watch?v=beGEpBIkUwE
Ḿ氏はそのままD936E3を北へ進んだ。ロンドル通りD936を越えて駅へ向かった。1kmくらい先の右側にLa maison botaniqueの建物が見つかった。
「民家なのかしら?ホテルの看板は無いわね」嫁さんが言った。
「昨日電話で今日の夕方には着くと話してあるんだ。到着直前にもう一度電話することになってる」
「ああそう・・」
カステリオン駅は、その先すぐそこに有った。M氏はここでも一度停まった。
「駅もお分かりですね。では、ここからChâteau Beynatへ向かいます」
クルマは駅前の広場で大きくUターンした。そしてロンドル通りD936を右に曲がると、これを直進した。
しばらく走るとChâteau Beynatの石造りのような看板が見えた。
Château Beynat(23 Bis Rue de Beynat, 33350 Saint-Magne-de-Castillon,)
https://www.chateaubeynat.com/
「ここは1917年にLéonard Neboutという人が立ち上げた。100年経っている」
対応は女性がしてくれた。シャトーを見学した後、何種類かのワインを試飲した。
ちいさなオードブルが出たが、これがすこぶる美味だった。葡萄はビオディダミで育てているとのこと、葡萄の管理は全て手作業で丹念に仕上げているそうだ。楽しい2時間だった。
帰りの車上、嫁さんが言った。
「ビオディダミをとても強調していたわね、要するに有機農法ということなんでしょ?」
「ん。たしかにその一部だけどな。説明をしてくださった女性が、畑に散布する成長促進剤を地下倉庫で作っているといっただろ?」
「ええ」
「DRCに行ったときもその話はしてたろ?アレがビオディナミBiodynamic agricultureの特徴だ」
「あ・思い出した。ルドルフ・シュタイナーね。あなたがDRCでしきりに話していたこと」
「ん。ルドルフ・シュタイナーの産み出した有機農法だ。多分にオカルティックな要素が多い。しかし凄いことに素晴らしい結果を出している」
「あ、あのDRCで使用している促進剤と同じものを、Château Beynatは自家生産しているわけね」
「ん。そうだ。ルドルフ・シュタイナー法を取る生産者は全て自家生産だ。憶えているかい? 製法の話」
「えっと、牛の角を新月の夜に色々なハーブを混ぜて作る話でしょ?」
「ん。それを地下に埋める。理想は水草から出来た泥炭の中に埋めるのが良い。大体は地下の貯蔵庫を使う。そして一冬寝かせる。翌春になるとこれが分解されて堆肥になるんだ。その堆肥を10ccで100リットルくらいの土地の水で薄めて時間をかけて拡散して、それを畑に撒くんだ。彼女が言っていたハーブの混合液についてPete ProctorがMaking Biodynamic Farming & Gardening Workの中で説明しているよ」
https://www.amazon.co.jp/-/en/Peter-Proctor/dp/1869416570
「➀ノコギリソウの花Achillea millefolium/をアカ鹿Cervus elaphus の膀胱に詰めて、夏の間は日光に当て、冬の間は地中に埋めるそして、春に取り出す➁カモミールの花Matricaria recutitaは、牛の小腸に詰めて、秋にピート泥炭に埋めて寝かせ、春に取り出す③満開のイラクサUrtica dioicaは、泥炭の中に埋め込む④オークの樹皮Quercus roburは、細かく切り刻み牛や豚の頭蓋骨の中に入れて泥炭の中に埋める⑤タンポポの花Taraxacum officinaleは、牛の腸間膜に詰め、冬の間地中に埋めて春に取り出す⑥バレリアンの花Valeriana officinalisやスギナEquisetumは、そのエキスを抽出して使用する」
「不思議ね、それが凄い効果をもたらすのよね」
「非科学的という言葉が、如何に非科学的か・・良く分かる。ルドルフ・シュタイナーのビオディナミは見事にそれを証明している」
「なるほどね。試飲させていただいワイン全部に力強さと優しさを感じたのはシュタイナー法だったからなのね」https://www.wine-searcher.com/find/beynat+castillon+cote+de+bordeaux+france/2021/japan
「ん。日本のシュタイナー信者たちはオカルトっぽくてヘキヘキするが、彼の手法の実践者たちにはそれがない。そこもまたシュタイナーの凄さだろうな。分かることは実践することが最初の一歩だということだ。シュタイナーの『農業講座』の日本語版はウチの本棚にあるよ」
「興味あれば目を通してみると良い」
「んんん~いいわ。あなたの話をきくだけで」
「はは♪」