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ボン・マルシェに想うこと04

第二帝政時代/ナポレオン3世の時代から始まる壮大な歴史のシフトチェンジを、此処では「ベル・エポックBelle Époque」と一言で呼ぼう。
英国に立ち上がった産業革命という大量生産技術が、遠い昔印欧語族が灌漑式農業を確立し、世界を席巻したときと同じくらいの衝撃を、全てのヒトの営みに与えた時代である。

最初は、その無機質な肌合いの"革命"に、フランスはあまり乗り気でなかった。
鉄と蒸気の象徴である鉄道の敷設でさえ、疑問を呈する人が多かった。(ちなみに、現在でもフランスの鉄道の駅が町の中に設けられておらず、郊外なのはそのためである)
しかし共和制が崩れ、ナポレオン3世が台頭すると、体制は一挙に反転する。
時代は、あたらしく登場した(産業革命がもたらした)ブルジョアと、その下部に出来上がった中産階級(農商という括りに入らない)がイニシアティブを握った。
20世紀に大きく花開く、大量生産/大量消費が始まるのである。

その意味では「貧相な小男」「行き当たりばったりな男」と揶揄されるナポレオン3世だが、次々と強引に実行したパリ大改造/自由貿易政策/それに伴う万国博覧会の開催/国内鉄道網の整備/投資銀行設立は、フランスに時代を牽引する強大な力を与えたと云えるだろう。
それが彼の(新しく現れた)金持ちたちへの阿りから来たものだとしてもだ。
・・しかしそれにしても無定見な男だった。華やかな成功によって、彼は最も守るべき「根」を見失った。そして老獪なプロイセン王国/ビスマルクに翻弄され、馬脚は簡単に出た。彼の統治の時代は短い。確かに、新しい時代を叫び、時代はそちらを向いた。しかし多くの変革の提唱者がそうなように、彼もまたいとも簡単に去ったのである。

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マルクスは、その著『ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日』で以下のように書く。
「すべての世界史的な大事件や大人物はいわば二度あらわれるものだ。一度目は悲劇として、二度目は茶番として。」
辛辣だが、なるほど・・と云える視線だと思う。

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勝鬨美樹
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました