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キューバ/ハイチの夢と光と風#02
その最初のサトウキビ・プランテーションは、1650年バルバドス島で始まった。これが濫觴となって、瞬く間に彼処の島でプランテーションが作られていく。 プランテーションから作られる砂糖は、巨大な富となったからだ。
砂糖は、幻惑的な食材だった。
料理を根底から変えてしまった。これほどのショックをヒトの食べ物に与えたのは穀物以来かもしれない。砂糖は殆ど麻薬的な衝撃を人々に与えたのである。
じつはスペインには砂糖を利用した菓子が多い。それは最初に砂糖の魔性に染まったのがこの国だったからかもしれない。そしてイタリアである。イタリアは長い間スペインが支配する地だったからね。
黄金をもとめて大西洋を渡ったコロンブスは、金をスペインにもたらさなかったが、新大陸がサイトウキビのプランテーションとして最適なことを示してくれた。もっとも黄金に魅せられていたコロンブスは、その自分が示した可能性には気が付かなかった。かれは生涯黄金だけを追って死んだ男だ。
ところが、 1500年代後半から始まったブラジルでのプランテーションは、スペイン政府に栽培法・精製法・労働管理・経営管理までのノウハウをもたらした。サトウキビプラテーションの運営ノウハウは、完全にスペイン人たちの手に渡っていたのである。
したがってそれをそのままコロンブスが四苦八苦した地・西インド諸島へ移植することはそれほど至難なことではなかった。
プランテーション経営は、何れの島でも比較的問題なく機能した。・・問題だったのは、外威だけだった。
二匹目のドジョウを狙う国が、スペインの後を追ってカリブの海を跋扈していたのである。
1600年代になると、国力を付け始めたイギリス、フランスも、カリブ海での自前のプランテーションを作り始めたのだ。・・それと海賊行為。イギリス、フランスの海賊たちは、しばしば荷物を満載したスペイン/ポルトガルを襲った。大半がイギリスの私掠船だったが、フランス船もパリコミューン以降は急増し、これら海賊と海上で戦うのがスペイン船団の日常茶飯事になっていたのである。
オランダの独立をかけた30年戦争に伴って、1500年代後半には英西戦争も始まりスペインは次第に疲弊していった。その疲弊に乗じて、イギリス、フランスが自前のプランテーションを彼処に作るようになったのである。もちろんその為に、各所で紛争が起き、占拠・略奪・破壊が起きた。
なぜ、それほど各所にプランテーションを作らなければならなかったのか? ひとつのプランテーションを拡充拡大すれば良いのではないか? 実は、サトウキビ・プランテーションには、重大な問題があったのだ。
同じ場所でサトウキビを作り続けると、土地が痩せきってしまうのだ。サトウキビは成長の早い植物である。土地の栄養分を全て吸い取ってしまう。そして、しまいにはその島を、作物が育たない島にしてしまうのだ
それと燃料。サトウキビの精製には大量の燃料が必要とする。そのために島の原生林を徹底的に伐採しなければならない。結果として、どの島もあっという間に丸裸になってしまったのである。
そして、製造過程に生まれる廃液。これが徹底的に水を汚してしまう。。。
そのために、何れのプランテーションも、ある時期を過ぎると廃棄され、新しい場所に移るしか方法はなかった。サトウキビを作り、利益を得続けるには、これを繰り返すしかなかったのだ。
煌くような砂糖の甘さは、原住民の絶滅と黒人奴隷の血と汗と涙。そして次から次へと、徹底的に島々の自然の破壊することから、齎されたものだったのである。
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