夫婦で歩くプロヴァンス歴史散歩#23/ジゴンダス#02
https://www.youtube.com/watch?v=Whcw5yOqKaY
最初に、3年前に書いたジゴンダスの記事を引用したい。
林道から奇岩・石灰岩の山「ダンテル・ド・モンミライユ」を見回して、ハイキング気分(だけ)を味わって、クルマで山道を下りた。シャトー・ド・サン・コムChateau De Saint Cosmeに寄りたい気もしたが、横目で見ながら前を通り過ぎた。
https://www.saintcosme.com/
「挨拶だけして、ワインを買ってみてもよかったのに・・」嫁さんが言った。「絶対、あなたのこと憶えているわよ」
「・・ありがたいな」
道は大通りになり、リマート通りへ曲がるとすぐに村へ到着した。ホテルは村の角にある。
オーベルジュLe Bistrot de l'Oustalet(5 Pl. Gabrielle Andéol, 84190 Gigondas)
https://www.loustalet-gigondas.com/
時間を見ると・・予約していた時間を30分ほど過ぎていた。クルマを降りて、すぐにレストランのガルソンに詫びを入れた。ガルソンは肩を竦めただけで僕らを席に案内してくれた。
「よかったわ。お昼食べられなかったらどうしようかと思っちゃった。内心冷や冷やしたわ」
クルマの前で心配顔のドライバーにOKマークを出した後、彼とは今日で終わりなので十分お礼(。チップ)をした。ドライバーは笑顔で頭を下げて走り去った。
「チェックインは3時過ぎでしょ?」と嫁さん。
「ん。食事のあとで充分だ」
「・・でも、すごい所ね。あのロシェ・デュ・ミディって。見つめているときに何故か熊野山道を思い出したわ」
「そうだな。山深いというだけでなく幽玄を思わせる佇まいはカミ宿る地だな。僕も同じ印象があったよ。熊野が修験者を集めたように、エクスプロヴァンスは修道士たちを集めたのかもしれないな」
「サンクチュアリ?」
「ん・・熊野ほど前人未踏ではないけどな。ヒトは早くから住んでいた。・・実はこの辺特有の家の作り方があるんだ。ボリーBoriesと云うんだけどな。砕きやすいチョーク状の石灰石を重ねて石の家を作るんだよ。ボリーは先史時代から有ったと云われてる。アヴィニョンの東、ゴルド村の近くボリエスという村が有名だ。先史時代にはこの辺りも石造りの家ボリーズが集落として有ったかもしれない」
「山と石が生活の中心にあったわけね」
「ん。まさにそうだ」
「葡萄畑が作られるようになったのは何時からなの? 」
「実はよく分からない。史料がないんだ。発掘物はある。村の彼処で見つかるローマ時代の無数のコインや陶器/テグラエは有る。最近、サン・アンドレのブドウ畑で発掘された中期新石器時代の先史時代もある。しかし、ではワインを作っていたかというと・・らしき遺物も史料もないんだよ。ただ、さっき言った古生物学者ウジェーヌ・ラスパイユが、調査中にバッカスの顔を発見している。
バッカスはワインの神様だからな。彼はこれをもってローマ占領期には既にジコンダスにワイン畑は言い切ってるが・・これに続く発見物はない。・・となると、1120年頃にヴェゾン司教ロスタン 3 世が、彼の所有してていたジゴンダスの邸宅を教会に寄贈したという記録がある。これには邸宅に葡萄畑が有ったと残されている。"Petro vero Alberto Gigundatis pro vinea quae sita est juxta viam publicam est inter (... otam) eurovium et fluvium Ovicœ Solidis ordo dedit"これが初出だ。以降1376年以降には土地の公正証書にも葡萄畑の所有者の載るようになっている。Les Hautes ,Basses Garrigues, Teyssonnières, Chanteduc, Ventolon, Pallières, Trignon, Beaumettes,La Coste de Saint-Cosmeなどがある。・・しかし、だな」
「あ・でた。しかしだか」
「ミストラルが激しい地域だ。葡萄を育てるのは至難だ。それを村人の生活の手段にするのは大変だ。それなんで手間のかからないオリーブや桑の木、アプリコットやトリュフ/蚕の飼育の栽培に転向する住民も多かったそうだ」
「なるほどねぇ。貧しかったわけね」