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ワインと地中海#45/マグナ・グラエキア#02

「ギリシャ人のイタリアへの移植が始まったのはBC750年ころだ・・といったろ?同じころにレラントスLēlantos平野の領有をめぐってアテナイ側で大きな戦争が有った。都市カルキスとエレトリアの戦いだ。レラントス戦争Lelantine Warというんだが、これに周囲の幾つもの都市が巻き込まれていく。カルキス側についたのがサモス/エリュトライ/コリントス/スパルタ/テッサリアだ。エレトリア側にはミレトス/キオス/メガラなどが参戦した。戦いはカルキス側の勝利に終わった。エレトリアは焼き尽くされて廃墟になっている。敵に捕まればそのまま奴隷にされてしまう。このとき、大量の敗残者/逃亡者が出て散逸した」
「その人たちが海を渡ってイタリアへ移動したの?」
「ん~それほど単純ではない。しかしこの戦争が、海外への移植動機の大きなきっかけになったことは間違いないと僕は思うな。デルフォイの神託が始まる100年以上前の話だ」
「デルフォイ?」
「他所へ移民するのはデルフォイの神託が多かったんだよ」
「神さまの命令だったの?」
「ん。そうだ。ヘレネス(ギリシア)の人々は、戦争や植民などの可否を神に訪ねた。しかしイタリア半島南部への移植は、デルフォイの神託が本格化するより100年以上前に起きている」
「神さまの命令じゃなかったわけね」
「デルフォイの神託がいつから始まったか、よく判っていない。本格化したのはBC500年ころからだと云われてる。神託はパルナッソスという山にあるアポローンの神殿で行われた。パルナッソスというのは、アテネから西北150kmにある石灰岩が剝き出しになった霊異漂う奇山だ。パルナッソスは、ニンフ・クレオドラとクレオポムポウスの子・半神半人だと云われている。山はニンフたちの棲家だと云われている。アポローンの神殿は、その山の西側にある。その神殿にニンフたちが集い、神託はニンフ傅くピューティアPythiaと呼ばれる巫女が憑依状態になって行う。きわめてデモーニシュな儀式だ」
「ギリシャって、プラトンとかソクラテスとか・・とても理性的な世界のように思っていたけど」
「いや、むしろ魔術的な世界だ。ジュリアン・ジェインズの説だと、ギリシャ時代はまだ、神は沈黙しない」


「ああジュリアン・ジェインズねぇ。あなたに必読だ!と云われて読んだけど、なんかよく判らなかったわ」
「パルナッソスParnassusという言葉の語源は、ヒッタイト語の"家"を同根とする言葉らしい。おそらく聖域パルナッソスの始原はギリシャ人より前だったかもしれない。

無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました