古都ナントのワイン/ミュスカデ
近所の店で、嫁さんが「おまかせで白」と言ったら、ロアールのミュスカデを出してくれた。酸味がね、どうかな?と思ったけど・・まあ大丈夫ラインだったようだ。
「ミュスカデの里はな、ナントなんだ。」
「ブルターニュ?」と嫁さん。
「ん。ロアールは長い川だからな。フランス中部のセヴェンヌ高地から延々と1000km流れて、大西洋に流れる川だ。ミュスカデはその最西端で作られてる葡萄だ。」
ナントは古都です。パリからはTGV一本で行けますから、ぜひ一度訪ねてみることをお奨めします。
「ミュスカデはムロン・デ・ブルゴーニュが祖形なんだ。」
「ブルゴーニュの葡萄なの?」
「ん。耐寒冷種でね。1700年台に、同地に持ち込まれた。推奨したのはオランダ商人たちだ。」
「オランダ人が?どうしてオランダ人が推奨したの?」
「当時のワインマーケットはオランダ商人が仕切っていた。前にボルドー歩きをした時に話したろ? ボルドーは救いようのない沼地地帯だった。それを灌漑し開墾したのはオランダ人だったという話。このあたりもな、ワイン商人たちはオランダ人だったんだ。」
「びっくりね!そんな話、そう言えばしてたわね。」
「ん。でもオランダ商人たちがブルターニュで望んだのは、スティルなワインじゃなくて、それを蒸留したブランデーだったんだ。ワインは長持ちしないからな。流通という観点から考えるなら高アルコールなブランデーの方が良い。だからオランダ商人たちは、ムロン・デ・ブルゴーニュをナントの都に近い農夫たちに植えさせたんだ。」
「その葡萄って、ブランデー向きなの?」
「いや、別にそう言う訳じゃない。でも丈夫で寒さに強い種類なんだ。ただ、酸味が強い。スティルワインとして飲むには、わりとしんどい。でも蒸留しちまえば関係ないだろ?だから丈夫で強い品種を植えさせたんだ。ちなみにな、ブランデーはオランダ語源だ。焼いたワインbrandewijnという意味だ。 」
「なるほどね。焼いたワイン・・その通りね。自分たちが売るから自分たちの名前をつけたのね。」
「そういうことだ。」
「ミュスカデって、その葡萄の改良種なの?」
「ん。名前もムロン・デ・ブルゴーニュのムロンの派生でミュスカデだ。メロンのような香りと言う意味だ。」
「あ、そういえば確かにメロンっぽい香りがする。」
ちなみにムロン・デ・ブルゴーニュは古代種であるグアイ・ブラン(独語)ヴァイサー・ホイニッシュを祖形としている。グアイ・ブランはピノ・プラン/ピノ・グリもそうだ。
こちらのほうは遥か北東アルザスから北を主生産地にしている。
ところで・・ミュスカデは牡蠣がジャストフィットする。とくにブルターニュ産の小ぶりな牡蠣は、シャブリよりミュスカデだ。
こいつは喉まで出かかったが、言わなかった。言ったら「じゃあ、もういっぱい」と言うだろうから・・