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アジェのパリ#06/ベレニスとの出会い
前後の経緯と残された資料から鑑みると、おそらくベレニス・アボットはマメに独りぼっちのアジェを訪ねていたようだ。最初にアジェの遺骸を発見するのは自分だろう・・そう思っていたかもしれない。
愛妻に先立たれてから、アジェは完全に創作意欲を失っていた。出かけることも稀になっていた。アジェの使用していた写真機材は旧式で大きく重量もあった。体力が極端に落ちたことも有って室外に持ち出すのは難しくなっていた。アシスタントだったベレニスからそんなアジェの様子を聞いたマン・レイは、最新式の小型36mmカメラを無償貸与すると言いだしてくれたが、アジェは無言で横に首を振るだけだった。
ベレニスはそんなアジェを見ながら、深く決心をしていた。・・私が彼の作品を守る!と。
ベレニスはアジェの死を知ると、すぐさま大家と話した。おそらく家賃の支払いが停滞していたのだろう。ベレニスは大家からアジェの家財道具一切を買い取る交渉をした。管理人は1000ドルと言った。
ベレニスはすぐさまニューヨークのジュリアン・レヴィに電報を打った。
「アジェ シス コレクション マモルヒツヨウアリ シキュウ1000ドル ソウキン コウ」と。
ジュリアン・レヴィは即応した。同時にアジェの作品集出版のための資金も送った。
この奇跡の連携ワークによって、アジェの写真は守られた。その意味でアジェは幸運だったと云えよう。
こうして1930年。アジェの最初の写真集が世に出された。
その最初のページには、ベレニスによるアジェのポートレイトが載っている。
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