パリのマルシェ歩き#47/マレの蚤の市04

Bistrot cache(13 Rue Saint-Paul, 75004 Paris)を出て、そのままシャルマーニュ通りRue Charlemagneへ向かって歩いた。
「もうひとつ場所が分からないけど‥サンポール・サンルイ教会はもう少し北でしょ?」
「ん。この小路をぬけてぶつかったシャルマーニュ通りの向こうにあるのがサンポール・サンルイ教会だ。その横にあるのがVestige de l'église Saint Paul des Champs(41 Rue Saint-Paul, 75004 Paris)があった場所だ。それを囲むように、向こう側にもLe Village Saint-Paulはある。

サン・ポール・デ・シャン教会Église Saint-Paul-des-Champsは、サンポール・サンルイ教会Paroisse Saint-Paul Saint-Louis(99 Rue Saint-Antoine, 75004 Paris)の前身になった礼拝堂だ。7世紀後半に建立されたという。
起したのは聖エリギウスSaint Éloiという人でね。この人はダゴベルト1世の宮廷に仕えていた金細工師だった。中々信仰深くてね、奇跡を起こすのも得意だったから641年にノアイヨンNoyonの司教に任命されてる」
「ノアイヨン?」
「古代ローマが作った町だ。当時はノヴィオマグスNoviomaguと呼ばれていた。パリから、やや北西に90kmくらい離れた町だ。クローヴィスのフランク王国は此処を拠点にしていた。当時からとても重要な所だった」
「行ったの?」
「ん。ジャン・カルヴァン博物館Musée Jean Calvin(4 Place Aristide Briand, 60400 Noyon)が有る」
https://museeprotestant.org/en/notice/jean-calvin-museum/
「不思議なとこまで出かけてるのねぇ」
「ローマとガリアは、地中海と同じぐらい僕の人生のテーマなんだよ」
「ふうん～。たいへんね」
「・・はい」

「で。金細工師だった聖エリギウスが起こしたサン・ポール・デ・シャン教会が此処に有ったのね」
「ん。当時の王ダゴベルト1世の宮廷は今のサント＝ジュヌヴィエーヴ修道院周辺に有った。リヴ・ゴーシュ(左岸)だ。しかし聖エリギウスはシテ島に近接した右岸リヴ・ドロワットRive Droiteに起こした」
「どうして?」
「墓所だよ。墓所は都市の中に作らなかった。前に話したろ?埋葬するから間々伝染病の発祥地になるからだ。当時の墓所はシテ島に有った。サン・ポール・デ・シャン教会はその墓所の川を挟んだところに作られたんだ」
「シテ島に墓所なんかないわよね」
「ん。ない。その場所にはサンテロワ教会Église Saint-Éloiがあった。今はこれもない。パリ警察署になっている」
「生々流転したわけね」
「ん。まさにその通りだ。そのサン・ポール・デ・シャン教会が、サンルイ教会に歩成したのは1200年代に入ってからだ。フランス王フィリップ2世（フィリップ・オーギュスト）の時代だ。この時期にノートルダム寺院がサンルイ島に建てられた。パリがセーヌをロジスティックとして商業都市へ変わって来た時代だ。そして1600年代のころからイエズス会が台頭してサン・ルイ教会は彼らの管理下に入ったんだ、1615年から1641年に大きく拡張建て替えがされた。
お金を突っ込んだのはルイ13世とその母マリー・ド・メディシスだった。彼は意図的にサン・ルイの名前に拘ったんだろうな。サン・ルイはフランスの王ルイ9世のことだ。ルイ9世は第7回第8回と十字軍に参戦してね。8回目に病にかかって死んだ。それで聖別された。だからサン・ルイなんだよ」
「なるほどねぇ」

「この時期に、今の周辺環境も殆ど出来上がっている。それとフランス政府が政権的にも安定したんで、貴族たちがこの辺りに広大な屋敷を幾つも作ったんだ。。その名残がLe Village Saint-Paulとして、今残ってるわけだよ。
もちろんフランス革命があった。教会も邸宅もも一時はすべて閉鎖された。でもナポレオン時代には復活した。このときも先導したのはイエズス会だった。彼らがサンポール・サンルイ教会という二重名を提唱したんだよ。1803年1月15日だ。ベロイ＝モラングル枢機卿Jean-Baptiste de Belloy-Morangleが中心になった」
「ベロイ＝モラングル枢機卿って?」
「ナポレオン・ボナパルトがパリ大司教に任命した人物だ。1802年だ。1803年に教皇ピウス7世によって枢機卿になっている。多分に政治的視野を持った人だった。1808年に亡くなっている」
「なるほどねぇ。ナポレオン三世がパリ大改造指令したときに、この部分が対象外になった理由は良く分かるわね」

夫婦で歩くパリマルシェ蚤の市散歩: 19世紀パリを偲びながら 夫婦で歩く歴史散歩