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ジンファンデルの話12/おわり

禁酒法を挟んで、西海岸の酒類の販売は飛躍的に伸びました。この「酒類」という切り口で生産者たちを見つめてみると、すぐにとても面白い事に気が付きます。ウィスキーを作っているのは英国からの移民です。バーボンを作っているのは大半がアイルランドからの移民で、グレンウィスキーを作っているのは英国本土からの移民です。一方、ビールを作っているのは圧倒的にドイツからの移民です。この住み分けは、かなり厳格です。ワインは・・というと。ニューイングランド系のピューリタン、北イタリアからの移民(南からではない)、そしてドイツ系です。

ところでこの世紀の悪法「禁酒法」は、当時台頭していたドイツに対するバッシングであり、ドイツ系の移民が作っていたビールへのバッシングから始まったものでした。なので最初は「ビール」の生産を規制する法律として発案された。それがいつの間にやらアルコール全体を規制する話になってしまったのは、酒類業界を構成していた連中の民族的な確執が酷くて、一致団結したロビイスト活動が取れなかったからです。
英国系・イタリア系の...酒類販売業者はドイツ系のビール生産者が潰されるのは大歓迎でした。だから法律の成立を放置した。ところが一転火の粉は酒類業界全体にアレヨアレヨという間に広がってしまった。それが「禁酒法」だったのです。

さて。アメリカ合衆国におけるワインのワインの生産量のほぼ80%がカルフォルニア州ですが、生産者は大別するとこの三つの民族のいずれかです。その民族ごとに彼らの作っているワインの特長を見ると、とても際立っており面白いのですが、ここでは触れないでおきましょう。ただ共通する部分だけ取り上げたいと思います。それはカルフォルニアで作られるワインの大半が、全米マーケットを狙った”安酒”だということです。
カルフォルニアでは、相変わらず今でも生産量の80%が安酒です。いわゆる最近評判のカルトなカルフォルニアワインは、生産量から見るなら20%程度です。その”安酒”の代名詞がジンファンデルんのです。

そしてアルコール度数が高ければ高いほど売れます。そのためにジンファンデルから作る安酒は人為的にアルコール度数を高くします。「セニエ法」と云いますが、製造の過程で果汁の一部を除いてしまい濃厚にしてより発酵を促すという方法です。これを採するとアルコール度数が15%を超えることも可能になります。

実は、その際に除かれた果汁を使って生産されるワインが有ります。ブラッシュ・ワインです。ほんのりと桜色で、ロゼに近い雰囲気で、安価で意外に美味しい。
これに「ホワイト・ジンファレル」という名前を付けて販売する生産者が1970年代から登場しました。折からのワインブームに乗って、安価で美味しい「ホワイト・ジンファンデル」は大ヒットしたのです。現在ではジンファンデルを使ったワインの生産量の90%が、この「ホワイト・ジンファンデル」になっています。

この「ジンファンデル=安酒」という図式ですが、前世紀末から少しずつ変わりつつあります。
1960年台にワインの世界を揺るがした「パリスの審判」が「カルフォルニアワイン=ダメダメな酒」という定評を覆してしまったからです。たしかに生産量からいえば、カルフォルニアは”駄酒の里”ですが、20%のカルトなワイン(だから高価)を作る生産者のものは極めて良質です。旧世界に負けない。「パリスの審判」が彼らにマーケットをもたらすと、実はジンファンデルという葡萄にも僥倖が訪れました。駄酒の代表選手みたいなものだったジンファンデルを使って、プリミティーボなみの良質なワインを作ろうと試みる生産者が次々と現れたのです。
実はジンファンデルは古木が多い。頑強なジンファンデルは砂地でも育ちます。前述したようにフィロキセラは砂地では死滅します。そのためにカルフォルニアには自生根のジンファンデルが、それも樹齢100年を超えるジンファンデルが存在するのです。こうした古木に注目した生産者たちが、個性的な良質のジンファンデルを作るようなりました。

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勝鬨美樹
無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました