円周率は存在するのか?

「円周率の中に数字のゼロが1万回続いて現れることがあるか?」という問いについて、辻下徹「数学と不定性」で取り上げられています。(p4)
https://ac-net.org/tjst/doc/tjst/99b-futeisei-101.pdf

以前は、「円周率は無限に続くので、いつかそういうこともあるかもしれない」と漠然と考えていました。

noteの執筆者の中に言及されている方がいらっしゃいましたが、野矢茂樹『無限論の教室』の説明が分かりやすかったです。

πと同様、√2も1.41421356…と無限に続いていきますが、ルート2を求めるときには、2乗して2に近くなるよう、2以下の数を求めます。√2とは、1つの完結した数につけられた名前ではなく、この方法につけられた名前、規則の名前である。(同書p94)
実数は、数直線という均質なイメージの上にあるものではなく、いろいろな「方法・規則の寄り合い所帯」(同書p95)である。

πの話に戻りますと、まだ展開されていないπの先は、分からないのではなく、存在していない。(同書p174)
確定され得ない円周率全体を眺める主体を想定するのは間違いではないかということでしょうか。

このような思考を経て、「冒頭の問いはナンセンスである」と言い切ってもいい気がしますが、この先には排中律の話やゲーデルの不完全性定理など深遠な話も待ち構えているようです。とりあえず、πの話は「永遠の未完成」という感じです。(同書p229)

何かをリアルなものとして捉えがたいとき、「それは手続きの話かも」と見る視点が勉強になりました。(間違った結論かもしれませんが。)


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