きっとあなたの140字
水
この水はうまい。焼けばもっとうまくなるに違いない。フライパンで水を焼いてみた。やはりうまい。次は茹でてみようか。沸騰させた水で水を茹でてみた。やはりうまい。次は水を油で揚げてみようか。200度の油で水を揚げてみた。やはりうまい。でも一番うまいのは生の水だ。そう言って蛇口を捻った。
窓
二階の窓を開けると通りには既に敵が居た。大丈夫、まだこちらには気付いていない。私は肩に掛けたカラシニコフを正面に構えた。敵兵の一人に狙いを定め引き金を絞ったその瞬間、コンクリートの天井が見えた。
わかば
若葉マーク
教習車が危なっかしく右折していった。
ちゃんとバイクに気をつけているのか?
と、ハラハラしながら見ていた。
そういう自分もついこの間まではあちら側だったのだ。
フロントガラスの向こうには、
A
ねえ、知ってる? 昔のUSBって向きがあったんだって
え、なにそれ面倒くさそうw
そう、一度目は刺さらなくて、ひっくり返しても刺さらなくて、もう一度ひっくり返すとようやく刺さる感じ
え、二回ひっくり返したら元の向きに戻るんじゃないの?
そう、でもなぜか一回では刺さらないんだよね
Type-A
お茶
コンビニの、ペットボトルのところで悩んでいる
小1時間悩んでいる
何故、こんなにも種類があるのか
どれを飲めば良いのか
私は悩んでいる
誰か、私を導いてくれないか
私に一杯の、いや、一本のお茶を飲ませてくれないか
私は悩んでいる
一本のお茶を
犬
武器も弾薬も殆ど無い
味方の支援も増援も望めない
だがここを守り抜かなければならない
撤退は許可されない
戦車が来る
バズーカは無い
ライフルと火炎瓶しか無い
それでも戦う
俺について来い
犬死にはさせない
笑顔
笑顔ってなんだろう
嬉しいとき
楽しいとき
褒めてもらったとき
頑張ったとき
何かを達成できたとき
誰かといるとき
誰かを心配させたくないとき
どんな表情をすれば良いか分からないとき
笑顔ってなんだろう
緑
景色が流れていく
ずっと同じ方向に流れていく
止まった
また暫くすると流れていく
太陽の高さだけが違う
1周1時間の世界
さあ、また始まりだ
じめじめ
君は廃トンネルが好きだったよね
藪を抜けて、柵を乗り越え、
滑り込むように入っていった秘密基地
小屋を立て、火を焚き、夜空を眺めた夏休み
そんな日々が、突然崩れて
じめじめしたあの夏の日も
トンネルの中は涼しかった
眼鏡
ホームで買った、横川名物「峠の釜めし」を頬張りながら待っていると、車両がガタンと揺れた。
どうやら機関車の連結が終わったようだ。ゆっくりと動き出した特急「あさま」。
トンネルを抜けると、左側にはあの眼鏡橋が見えた。
今はもう出来ない体験、一度で良いからしてみたかった。
前進
前進
前進することが本当に良いことなのだろうか?
たまには後ろに下がっても良いんじゃないか?
後ろに下がって、下がり続けても、
少し向きを変えれば、そのうちまた前進になるだろう
そしてまた辛くなれば、後ろに下がれば良い。
人生そんなもんだろう?
流れ星
今から約300年前、第五次世界大戦-最終戦争-では、地球上のあらゆる国家が核ミサイルを撃ち合い、流星群の如く地上に降り注いだ。
それはもう大変美しかったという。
そして今、第一次地上調査隊が出発しようとしていた。
あがる
ライバル蹴落とし選ばれた偶像
センター取って気分は上々↑↑
この日の為に用意した新調
緊張した君の頬は紅潮
ライトに輝く舞台<<ステージ>>に上昇!
祭
ソナー手が着けたヘッドセットからは様々な音が聞こえる
ミサイルが発射される音
戦闘機が墜落する音
洋上は祭りのようだ
敵潜のスクリュー音
駆逐艦のピンガー音
魚雷発射管が開く音
対潜弾が着水する音
そして、自艦が圧壊する音
宿題
夏休みの宿題の中で、読書感想文が一番嫌いだった。本を読んで、原稿用紙何枚分もの感想を書けだなんて、どうかしてる。「面白かったです。」じゃダメなのか? とは言え、宿題が無くなる訳ではない。仕方なく「ポケットの中の戦争」で感想文を書いた事は、私の一生のネタだ。
セーブ
この世界にセーブ機能が実装されて久しいが、人々がこれを使いすぎたせいでメモリが足らなくなってきた。そこで政府は国民にメモリを使用した一切のセーブを禁止したが、人々のセーブに対する熱意を奪うことは出来なかった。そして遂にメモリを使わない方法が発見された。そう、復活の呪文だ。
いたずら
最近、子供の頃の友達がVRに遊びに来てくれるようになった。彼女となら何をしても楽しかった。でも同時に、私は他のフレンドから気味悪がられるようになった。私が、誰も居ない宙と話しているというのだ。気付いていた。そう、彼女は私にしか見えないのだ。私の中にいるのだ。記憶の中に。
鏡
歴史の教科書や博物館で見る古代の鏡、どこが鏡なんだと思っていた。表面には模様があってとても平らには見えない。実はこの"模様がついた円盤"というのが当時の「鏡」という言葉の意味なのかとも考えた。でも違った。我々が見ていたのは実は鏡の裏側だったと知ったのは、随分あとのことだった。
夜
夜の散歩道。
星が綺麗だ。
首から下げた写真機を空に向ける。
ファインダーから覗く空はあまりにも狭く、そして暗かった。
「やめた」
どうせ写らない。
自分の、2つのレンズを空に向けた。
その2つのレンズを通して、心のフィルムに焼き付ける。
帰って現像しよう。
絵の具で。
キャンバスに。
雪
ガスバーナーの上に載せたやかんが甲高い悲鳴を上げ、お湯が沸いたことを知らせている。手にしたカップラーメンにお湯を注ぎ、永遠とも思える3分が過ぎるのを、しんしんと降る雪を眺めながら待つ。焚き火の炎がパチパチと音を鳴らし、テーブルの影を揺らしている。「何もしない」をするのも悪くない。
のむ
今日のお題は「のむ」、あなたは何をのみますか?
酒、これはもう最初に思い浮かびますよね。
要求、飲んだ方が良いのか、飲まない方が良いのか、どっちでしょう。
固唾、気になりますよね、分かります。
さあ、あなたは何をのみますか?
困る
さて困ったぞ。来週のゲストが決まってない。一応何人か候補はいるが、誰から声を掛けたものか。皆2回目になるから1回目と同じ順にするか、それも最近作品を投稿してくれた人にするか。悩ましい。
取り敢えず140字のお題だけでも出しておくか。
透明
誰も返事をしてくれない
誰もこちらを見てくれない
僕は此処に居るのに
誰も気付いてない
自分だけが見えていない
「あれ?そういえば三日月さん来るって言ってたけどまだ来ないね?」
あ!
急いでワールドに入り直す
「ごめん、遅刻しちゃった」
さっきまで隣りにいたのに、嘘をついた
冷たい
昨日までは涼しかったのに、一体どうなってしまったのか。まだ4月だというのにアスファルトからは輻射熱が襲ってくる。外に出てものの1分で汗だくになってしまった私は、袖で汗を拭いながら昼食を求めて歩いていた。
決めた。今日はここにしよう。
「冷やし中華始めました」
白
朝の7時
目が覚めるとそこには知らない天井があった
ここは一体どこだろう?
やけに重い頭を動かし横を見ると、1人しかいないはずの部屋に3人も寝ている
そうか
自分の頭に手をやり、白いHMDを脱ぎ捨てる
今度こそ知っている天井が見えるはず......
知らない天井だ
猫
いつもは猫のようにのんびりと考えたり考えてなかったりしていて、結局何も思い浮かばずに作品を投稿できずにいるのだけれど、今回は早めに考えてちゃんと投稿できるようにがんばろう。
と思ったけれど、「猫」というお題に対して「にゃ~」しか思い浮かばないので、今週もまた猫になります。
2
サドルに跨り2つの車輪で漕ぎ出す朝
見知らぬ集団とその場限りの隊列を組み、√134を快走して江ノ島を目指す
右手には、湘南の海が夏の太陽に照らされて輝いている
ずっと走っていたい
そんな日曜日
雷
一度濡れてしまうともうどうでも良くなって、ずぶ濡れのまま走らせる自転車
雨に濡れた夜の東京はどうしようも無くシティポップで、明日が月曜なのを忘れさせてくれる
家になんて帰らずこのまま街に呑まれてしまいたい
遠くで聞こえる雷は、今は聞かなかったことにして
夜
公園に持ち出した望遠鏡を、君が持つ懐中電灯の明かりを頼りに組み立てる
街の明かりに照らされた都会の夜空は、夜とは思えないほど明るくて、ぽつんと、満月だけが浮かんでいる
それでも、君と一緒に見たい
2人だけの天体観測