過敏さと共存するためにすべきこと
苦悩の感じ方は人によってさまざまです。
例えば、借金が100万円だからたいしたことがなくて、三億円なら苦しんで当然だなどと言うような、客観的に推し量れる尺度はありません。
いくら虐げられても這い上がれる人間もいれば、赤の他人のたったひと言に打ちのめされる人間もいます。
世間一般に見て、大きな難を抱え、へこたれない人間がいる限り、小さな難を抱えている人間というのは、情けないとか根性がないなど、追い打ちをかけるようにレッテルを貼られてしまいます。
HSPは後者の立場になることが多いのではないでしょうか。なにせ、どんな刺激にも敏感すぎるのですから。
そんなちっぽけなことで……
ああ、そのとおり。そんなことは百も承知だ!
こだわるなよ……
こだわりたくなんてない!思考が粘着テープみたいに引っ付いて離れないんだ!
くだらない……
そんなくだらないことが手放せないから苦しんでいるんだ!
もっと気楽に……
できるものならいますぐしたい!
一般的な考え方でHSPの悩みを解決しようとしても、無駄なばかりか、傷口をさらに広げてしまいます。
HSPが持つ敏感さは、機械のように強めたり緩めたりという調整ができない。
だからつらいのです。
なんと言っても、それらの溜まり溜まった負の感情を吐き出すところがないのがいちばんつらいかもしれません。
HSPの繊細さは、苦しんでいる、悩んでいるという自分の状況ですらいけないことではないのかと疑ってしまい、他人に打ち明けることすらはばかられるのです。万が一、それを打ち明けて真摯に受け止められなかったら、それこそ大事故です。
実際に、私もそういう経験をしました。後から考えれば、思慮の浅い人間に打ち明けた私が愚かだったのですが、本当に酷い言われ方をしたものです。
詳しくは、次の章でお話しましょう。
さて、HSPは自分の感情が過敏すぎることを理解しているし、ばかばかしいことに囚われすぎていることを理解しています。そういうものをすべてかなぐり捨てたい!
HSPを取り巻く世界は、常に切迫している状態だと言っても過言ではないでしょう。自分がこうあるべきだと思っている姿に対して、完璧を求めていると言ってもいいかもしれません。
けれどもこの世に完璧なんて存在しないのですから、常に自分にダメ出しをして過ごさなければなりません。それでも生きているのは、もはや奇跡です。死ぬきっかけ、あるいは勇気が今までなかったというぐらいの理由でしょうか。
映画『グリーンマイル』で囚人コフィ―は、無実でありながら死刑を受け入れます。彼は真実を知った看守に囁きます。
「人々の嘆き、悲鳴が
毎日毎日カラス片のように頭に突き刺さってきて
耐えられない。
もう、それらから逃れたいんだ」
過敏であることをやめることはできません。生きている限り、HSPは自分の周りに過剰なセンサーを働かせ続け、それが本人を追い詰め続けます。それでも生きていかなければならないならば、
捉え方を変えるしかありません。
結局は、気楽にとかちっぽけなことだと、言い聞かせなくてはならないの?とお考えになったかもしれませんが、そんな助言がHSPには役に立たないことを私はよく分かっています。私自身がそういう助言を今までいやになるぐらい耳にしてきてうんざりしていますから。
HSPは、どんなことも気楽に物事を捕らえられません。
HSPは、世間一般の人が思うちっぽけなことに過大に反応してしまう性分なのです。
だから、HSPのあなたがするべきことは、次の二点です。
1、あなた自身の不完全さを認めること
2、あなたが挑んだ事実を認めること
私は手の込んだ料理を作るのが趣味です。たいていはうまく作れるのですが、当然ながらいつも上出来とはいきません。見栄えの悪いケーキ、焦げ臭い煮込み料理など絶対にありえない!そんなものを目にしたときはショックで、誰も何も言わなくても、私自身が自分の才能を全否定してしまいます。まるで一生の不覚。そんなことをいちいち料理を作るたびに繰り返していたら、私はそれこそ一生料理を作ってはならないと判断してしまうでしょう。そこで、上記の二点を自分に言い聞かせるのです。
今日うまく焼けなかったケーキが私のすべての能力をあらわしているのではない。
ちゃんと心をこめて作ったことは間違いない。
なにかひとつうまくいかなかったことで、あなたの全能力を否定する必要はないのです。
あっ!失敗した
思うようにいかなかった
と感じたらまず、
挑んだあなたをあなた自身が認め、
受け止めてあげてください。