ものかきものがたり:3行め 「東京」
物書きになりたい。
未来への展望でも、未来への夢ですらもない。ただの妄念じみた空想、逃避に突き動かされた愚かな青年は、背嚢ひとつで東京行きの夜行列車に乗りこんだ。
東京行きの上り東海道線、夜行列車は――名古屋を出て、浜松、そして熱海あたりからは通勤時間帯の山手線もかくやという混みよう、ボックス席に座る私の前にも立っているおっさんたちが押し込まれる有り様で。
しかも、私に場所を揺すってくれた労務者風のおっさんはずっと酒を飲み続けていて、電車が神奈川に差し掛かったあたりからは絡