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ものかきものがたり

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物書きになりたかった―― 田舎の愚かな少年が、そんな妄念にとりつかれ。故郷を飛び出し、上京してもがいて迷って絶望して立ち直ってまた迷って。しまいには「不肖の私」たる物書きになるま…
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記事一覧

ものかきものがたり・9行め:「告白」

物書きになりたい―― そんな、無謀な夢だけを抱えて上京した青年。そして1年足らずでなんの展…

菅沼恭司
2か月前
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ものかきものがたり・8行め:「逢瀬」

「肉を食いに行こう。もちろん僕の奢りだよ」 青年が、印刷屋のアルバイトで出会った作曲家の…

菅沼恭司
7か月前
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ものかきものがたり・7行め:「接近」

いつもと同じように、印刷工場でのアルバイトに出て。確か、季節は5月頃の週末。 夏と冬の繁忙…

菅沼恭司
8か月前
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ものかきものがたり・6行め:「邂逅」

日雇いの倉庫作業にも、行かなくなった青年は、東京で無為な日々を過ごすだけの無職の男に成り…

菅沼恭司
8か月前
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ものかきものがたり・5行め 「活計」

上京して、初めての引っ越し。中野から逃亡する、一人ぼっちの引っ越し。 あの夜、喫茶店の常…

菅沼恭司
9か月前
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ものかきものがたり:4行め 「方便」

バブル期初頭。 上京し、東京某アニメ学院シナリオ科に入学した愚かな青年は。そこで、物書き…

菅沼恭司
10か月前
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ものかきものがたり:3行め 「東京」

物書きになりたい。 未来への展望でも、未来への夢ですらもない。ただの妄念じみた空想、逃避に突き動かされた愚かな青年は、背嚢ひとつで東京行きの夜行列車に乗りこんだ。 東京行きの上り東海道線、夜行列車は――名古屋を出て、浜松、そして熱海あたりからは通勤時間帯の山手線もかくやという混みよう、ボックス席に座る私の前にも立っているおっさんたちが押し込まれる有り様で。 しかも、私に場所を揺すってくれた労務者風のおっさんはずっと酒を飲み続けていて、電車が神奈川に差し掛かったあたりからは絡

2行め:「上京」

旅立ちの朝―― よく使われる表現ではあるが、私の場合。愚かな青年の上京、その旅立ちは夕暮…

菅沼恭司
10か月前
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1行め:「故郷からの逃亡または流浪のはじまり」

「物書きになりたい」―― 思春期の愚かな子供の心と脳髄を支配したその妄念。夢などではない…

菅沼恭司
1年前
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0行目:「今思えば」

某日、あるテキスト作業の打ち合わせの合間に―― T氏「そういえばさあ。なんで、また。物書き…

菅沼恭司
1年前
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