萩暮らし3日目【山陰線に乗る】ランチ&カフェから人口問題を考える(4月21日)
萩に来て3日目の朝も、鳥のさえずりと共に目覚めました。ここにいると、いかに東京が人工音で騒々しいかを改めて感じます。もともと山奥の電車や車がろくに通らないような場所で育った私(社員・Y)にとって、風が木の葉を揺らす音や雨音、鳥の声以外に何も聞こえないことは日常でした。早くも「東京に帰ったら萩が恋しくなるんだろうな…」と、ちょっと寂しい気持ちになります。
車を返却する前に移動、移動
きょう21日はレンタカーを返却する日。朝ごはんを食べたら、早目に買い出し(水、米などの重いもの)とランチを済ませ、荷物を一度「さんちゃんち」(=駅舎)に置きに戻ってから近隣を観光する予定です。
「ランチはどこで食べようかねぇ……」
きのう訪れた「道の駅 萩・しーまーと」の中には3つ店の飲食店があり、滞在中にコンプリートしたいところ。ただ、19日に少し歩いた中心部にある田町アーケード商店街の近くで見かけた、20日オープン予定の店も気になります。買い物の前に、オープン2日めの『みなと食堂ととと』にお邪魔してみました。
店についたのは11時ちょっと過ぎ。開店したばかりということもあって、まだお店の中は空いています。若くて元気な女性スタッフたちが「いらっしゃいませ!」と気持ちのよい挨拶をしてくれました。
店内はオシャレな雰囲気ながら気取らず、1人でも気軽に入れそう。海鮮丼やお刺身とフライのセットなど、どれもおいしそうです。蟹味噌の冷製茶碗蒸しに、ウニやイクラ、イカなどを乗せた『痛風プリン』や、かき揚げを世界遺産の観光名所である「萩反射炉」に見立てた「反射炉丼」など、オリジナルのメニューが多くある。ついつい、あれこれ頼みたくなりますが、まだ昼なのでグっとガマン。
代表・Mはお刺身とフライに小鉢がついた「萩をよくばり定食」、私は地元で水揚げされた魚の海鮮丼「名物ととと丼」を注文しました。ととと丼は、ごはんの上に角切りにされたお刺身がたっぷり乗っていて、その上には卵の黄身が。
「これ、たれとゴマを両方かければいいんですか?」とスタッフの方に尋ねると「お好みの食べ方でどうぞ! お茶漬け用の出汁もご用意しています」という返答。こういう感じ、個人的にはすごく好きです。
醤油の小皿とワサビもついていたので、最初は醤油ワサビでお刺身だけ食べるのもよさそうですが、私は黄身の上からすりゴマとタレをかけ、まずは一口食べました。
「おいしい!」
ちょっと甘めのたれに黄身が程よいコクを加えていて、断面を見ると刺身がたっぷりなので「最後にご飯だけ余る」という心配もなさそうです。もちろん、魚の生臭みは一切なし。ちょっと量が多いかな、と思ったのですが食べきりました(ちなみにごはんの量も聞かれるので、多めや少なめが選べます)。
小鉢としてついていたポテトサラダにはトビコ(トビウオの卵)がトッピングされていて、お酒が欲しくなるような風味です。イカに酢味噌を添えたものも、柔らかくておいしい。
Mが頼んだフライとお刺身のセットは、魚やイカのフライとお刺身に、同じ小鉢がついていました。「刺身も新鮮だし、フライがうまい! イカがふわふわだよ」と言ってました。
サンリブ派vsアトラス派?
さて、美味しいランチを食べたところで、今日は萩市の中心部にあるもう一つの大きなスーパー「サンリブ」へ初めていきました。到着日に萩市の職員の方から「スーパーはアトラスとサンリブがあるので、だいたいそこで買えばいいんじゃないですかね」と言われたのですが、たまたまMが最初にアトラスに行ったこと、アトラスにはダイソーもあることなどから、それまですっかり“アトラス派”になっていたのです。
アトラスは1階のみですが、サンリブは1階が食品・日用品売り場、2階が衣料品売り場と100円均一ショップ「セリア」、3階・4階は駐車場になっています。建物の前にも平置き駐車場があるので、雨の日は屋内駐車場、晴れの日は平置きでサクッと買い物、という使い分けもできて便利そう。
気になる食料品売り場は……「お酒が安い!」とM。私はお酒をほぼ飲みませんが、Mは飲みまくるので、お酒の底値にはめちゃくちゃ詳しい。「ビールも本絞りもアトラスより安い。サミットと同じくらいだ」と、事務所近くのスーパーとも比較して、ご満悦です。
しかし、萩暮らしを機にアルコール摂取量を減らそうと試みているため、あえてお酒は買わずにだしパックやカレールーなどを購入。
「お米はアトラスの方がいいね。産地品コーナーが充実しているし」
というわけで、その後アトラスへ。お米とミネラルウォーターなどを買って戻りました。
ちなみに、買ったお米は地元の萩市産。初日に買ったのはコシヒカリ2キロも山口県産米でしたが、この日に買ったのは萩市産でも駅舎のある三見地区の農家の方が作ったコシヒカリ5キロ。この萩市コシヒカリの食べ比べについても後々、書きたいと思います。
おいしいコーヒーを求めてさまよう
14時半ごろに市街地へ。萩市に来てから何だか自分で入れるコーヒーがおいしくないので、本格的なコーヒーを飲めそうなカフェを訪ねました。
「長屋門珈琲カフェ・ティカル」は、萩市定有形文化財・小川家長屋門の敷地内にある自家焙煎珈琲店です。
メニューを見て「おぉっ!」と思ったのが、コーヒーの種類が豊富なことももちろんですが、上から順に酸味の強いコーヒー、下から順に苦みの強いコーヒーを並べて書いてあること。苦みや酸味を★の数で表すよりも、ずっとわかりやすいし、選びやすい!
私もMもコーヒーは酸味が苦手で、深煎りの苦み強め系コーヒーが好きなので、下の方からチョイス。
テーブルに来たコーヒーを見てまず感じたのが、色がキレイなこと。正直、あまりコーヒーの色など気にしたことがなかったのですが、透明感がありながら(といっても色が薄いわけではない)、艶やかで(といっても油が浮いてるわけではない)、少しだけ赤身のある黒に近いこげ茶が美しい。
ひと口飲むと、エグ味などもなくスッキリとした旨味と苦み。おいしい。普段はカフェオレとかカフェラテとかミルク入りを好む私ですが、こういう店ならブラックを選びます。
ケーキも手作りなのか、他の店では食べたことのないような不思議な味で、これも美味しい! 店内はそんなに広くないのですが、あまり長居する方もおらず、コーヒーやケーキを楽しんだらサッと切り上げて帰っていきます。そんな他のお客さんの様子も見ていて気持ちがいい。
いよいよ山陰線で三見駅舎に帰る
その後はレンタカーを返し、東萩駅から始めての電車デビューです。駅で電車を待っている時に観光案内担当者(?)らしき若い女性がおり、Mがすかさず取材(というか勝手に話かけただけ)をしています。
そこで聞いたところ、
●萩市内の飲食店は基本的に営業時間が短く、全国チェーン店や一部の居酒屋・スナックなどを除いて、ほぼ18時には閉店する。
●そもそも、遅くまで飲み歩く若者が少ないせいもあり、コロナ禍が終わってからも店を再開することなく、そのまま閉店・退店したケースも多い。
●人口が減少傾向なので、店が減って「むしろちょうどよいのかもしれない」――。
……なんだか切ない話ですが、アルコールが苦手で「夕方は早目に帰って家でゆっくりしたい派」の私には、萩市のこんなあり方がむしろ好ましくも思えます。
そして帰りは初めて電車(いや、気動車なので汽車ですが)で帰ります。
Mが電車を動画撮影しようとスマホを構えました(Mは写真撮影&動画撮影をよくするので、このnoteの写真もほとんどMに任せてます)。
すると、ホームにいた4人の男子小学生グループが2〜3歩後ろに下がり、じっと黙りこみました。スマートフォンで動画の撮影が終わってMが「お待たせしてすみません」というと4人は電車に乗りかけたものの、1人が戻ってきて「ごめんなさい、僕の声が入っちゃったかも!」とMにいいました。直前までワイワイ騒いでいたから、気を遣ったのでしょう。いい子たち!
どうやら2~3歩下がったのも、Mの撮影のジャマにならないようにとの配慮だったようです。
なお、東萩~長門市の間は、駅によっては無人で券売機もICカードリーダーもありません。電車の運転席前に料金表や料金箱、両替機があるので、乗る時に整理券を取って降りる時に電車内で精算できます。東萩駅には券売機があるので、この日は降りる時に切符を運転士さんに見せて下車しました。
電車を降りて、駅舎を出るとすぐ右側に「さんちゃんち」の玄関。まだ住み始めてたったの3日ですが、三見に帰ってくるとなんだかホッとします。
朝から曇りで雨もときどき降るいうパッとしない天気でしたが、印象深い出来事も多く有意義な日曜日となりました。
【コメント by M 《2024/4/21》】 萩市の人口について
萩市の人口は、2020年(令和2年)の国勢調査によると4万4,626人。その前の国勢調査があった2015年の4万9,560人から約5,000人、減少した。萩市の「萩市人口ビジョン(改訂版)」(2020年3月)に掲載している住民基本台帳の数字も、2009年(平成21年)の約5万6,000人が、10年後の2019年(令和元年=コロナ禍前)には約4万6,700人とになった。
もっと長期で見ると、人口のピークは1955年(昭和30年)で9万7,744人だったようで、2020年の国勢調査時点ではピークから54%の減少となった。
出生数は1955年が1,918人だったが、2019年には195人となり、ほぼ10分の1に減少。1999年(平成11年)から比べても半減という、厳しい状況だ。
山口県内では10番目に大きな自治体であり、観光名所も名物となる産品も多く、農作物や海産物なども豊富な萩市。2005年(平成17年)の“平成の大合併”では萩市の周辺にあった川上村、田万川町、むつみ村、須佐町、旭村、福栄村が旧萩市と合併したが、人口減少の勢いは止まっていない。
そんな中でも、子供たちを含めて若者は元気で素直そうな印象を受ける。吉田松陰の「松下村塾」以来の伝統などもあるのだろうか、と思ってしまう。それだけインパクトの大きい歴史的な資産を抱えている土地なのだが、2019年の人口構成比でいうと65歳以上が42.6%、15歳未満の年少人口は8.9%で、生産年齢(15〜64歳)人口は48.5%となっている。
瀬戸内海側の自治体(下関市や山口市、防府市など)に比べると、街の経済活動状況などを見て歩くと、やはり活力は不足している感じはある。18時以降に開いている飲食店の少なさは、世代交代がうまくいっていないのか、それとも経済活動に対する執着心がもともと薄いせいなのか――。
まだまだ「お試し移住」の初期段階だが、そんなことを感じてしまった。
※扉の写真はJR三見駅付近の小さな鉄橋を渡る山陰線の普通列車「キハ40系」