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UXやマーケティングにおける定量評価の罠

私たちがサイトやサービスのUX改善のために現状分析を行う場合、まずは「数値化」されたデータに頼りたくなるだろう。
そこでマーケティングにしろ、ユーザビリティにしろ定量的な分析を重視するのが一般的だ。そしてこのようなデータを元に実際にマーケティングや経営を進めていくようなことをデータドリブンと呼ばれたりする。

このような分析は、客観的な数値で現状を示してくれるため、一見すると非常に頼りになるように思える。
しかし、私はUX評価において定量的な分析はあまり重視していない。というか否定派である。

数値の限界と副作用

定量的な分析の最大のメリットは、数値化によって客観性を持たせることができる点。
例えば、コンバージョン率やクリック率といった指標は、誰が見ても一目瞭然で、関係者に結果を説明する際には非常に便利である。
その一方で、これらの数値が示しているのは、あくまで表面的な結果に過ぎない。

定量的な分析では主にテンプレート化されたフレームワークや手法が用いられ、それに従ってマニュアル的に進められる特徴がある。
これはどのような人間が行っても性格に左右されない客観性があるように見える反面、ケースごとの課題に対する意識から遠ざかり、本質的な解決をより難しくする。

また、数値が一度示されると、その信頼性が高く見えてしまうため、誰もがその数字を疑うことなく受け入れやすくなる。
これはビジネス戦略の対局を見失うには十分な、誤ったバイアスを生み出す可能性があります。

本当に大事なこと

UX設計においての本質は実にシンプルだ。
ユーザーの心理を正しく理解し、共感を得るコンテンツを作ることである。

数値化されたデータが示すのは、結果として現れたユーザーの行動であり、誰しもそれは知りたいことなのかもしれない。

しかし、これ自体はそのサイトやサービスが良いものか悪いものかを白黒つけるものでしかない。

その背後にある「なぜそうしたのか」という深い動機や感情を追うフェーズにはいると、いつまで経っても見えてくることはない。

例として、Googleのデザインチームが行った研究では、ユーザビリティテストの結果を数値化するだけでは、ユーザーの本当の体験や感情を見逃してしまうことがあると報告されている。

また、Harvard Business Reviewに掲載された研究では、企業が単純な指標に頼りすぎると、顧客満足度の低下やブランドロイヤルティの喪失につながる可能性があると指摘されている。

データドリブンによる巨額失策の例

ナイキがマーケティングの失策によって250億ドルもの損失を出したというニュースがあった。最初に同社の元ブランドディレクターが、4年にわたるマーケティングの失策について、深く掘り下げた記事を発表したことが世に知れ渡るきっかけだった。

ざっくりと噛み砕くと「ナイキは、効果は低いが測定しやすいもの(つまり定性調査)に何十億も投資し、その結果これまでの良いアプローチまでも捨て、すべてにおいて失敗した」ということ。

詳しく解説している記事はこちら

【一部抜粋】
マッキンゼーの助言により、ナイキのジョン・ドナヒュー新CEOは「データドリブン」なアプローチに軸足を移すことを決定し、デジタル直販に会社を再編成し、明確なカテゴリーを中心とした以前のモデルを廃止した。 その魅力はわかりやすく、ボーイングや他の企業が数年前に陥ったのと同じ罠だ。

Pavel Samsonov(Midiumの記事より)

数値化できない領域こそメイン

定量分析が不要とまでは言わないが、多くの場合現状のよく無い結果を数値で証明する前に、サイトやサービスのUXデザインを見ればすぐにわかることで、組織内のあらゆるステークホルダーに証明すること必要はない。

実際、私がUX設計やアセスメントを行う際、ほとんど定性的な評価で行う。長年ユーザーに対して向き合い、研究を重ねてきた考察と、カスタマーに向き合ってきた顧客の考察を照らし合わせ、一つ一つ仮説を立てていくのだ。

ユーザーの心をつかむこと、彼らの共感を得るコンテンツを作ることは、は数字では捉えきれない領域だ。

ユーザーの行動の奥深くにある「なぜ」を見逃さないためにも、キャパシティっはそこに当てるべきであり、それはデザイナーと顧客の会話である。

ユーザーがどう感じて、どう行動するのか。それを理解するには、数字ではなく、人間の心を見つめる必要がある。

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