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ほとんどのUXは機能しない

1,000以上のデザイナーポートフォリオのうち90%を不採用にしたという記事。

<内容の一部要約>
似通ったポートフォリオは、実にデザイナーの経験不足や創造性の欠如を示してるとし、米国におけるデザインレベルが成熟した企業はこのようなアプローチによるものを必要としていない。

デザイン成熟企業は、創造的な方法で問題を解決できるデザイナーを求めており、UXブートキャンプで学んだデザインプロセスだけではなく、「雑多で非直線的なアプローチ」も必要としている。しかし一方で、多くのデザイナーは「直線的なプロセス」を重視し、ケーススタディを完璧なストーリーとして提示する傾向があるが、実際のデザインプロセスはそうではない。

https://uxdesign.cc/90-of-designers-are-unhirable-3a8238e3cca2

この記事にある「直線的なプロセス」とは、UXにおける大まかな設計プロセスのことで、例えば以下のような流れのことである。

  1. リサーチ(KPI、課題、指標など)

  2. ユーザー(ペルソナ、シナリオ、テストなど)

  3. デザイン(ワイヤー、プロトタイプ、スタイルガイドなど)

  4. テスト(ユーザービリティ、レビューメトリクスなど)

  5. 構築(テスト、ローンチ)

これは一般的なUX設計プロセスであり、設計者のほとんどが想定するプロセスだが、ここで問題としているのは、ほとんどのデザイナー(志願者)は、自身の作品を紹介するポートフォリオで、このプロセスがなんの隔たりもなくスムーズに進行し、最終的にうまくデザインできたというシンデレラストーリーのようなアプローチにあるという。

これは、実際に成功体験のないデザイナーが、こうあるべきと単純に考えている証明とも言える。

図1:上の図は一般的な直線的UXデザインプロセスの簡略図(出典)

本質的なデザイン・プロセスには始まりも終わりもなく、どのステップからでも始めることができる。しかし本質的には終わることはない。


図2:NNGによる現実的なプロフェッショナルなプロセス(出典

図2はニールセングループが提唱しているデザイン思考によるプロセス。各フェーズは、直線的なプロセスとは対照的に、反復的かつ循環的であることを意図している。最初のプロトタイプが作られた後、共感と定義の2つの理解フェーズに戻るのが一般的。

なぜなら、プロトタイプ化した後、アイディアが現実のものとなって初めて企てたデザインを客観視し、正確に評価することができるから。特に、プロトタイプから、以前は気づきもしなかった新しいユースケースが生まれたかどうか?は重要である。

さらに前進するために必要な結果を得るためには、フェーズ内のエクササイズを複数回行う必要がある。

例えば、定義フェーズでは、チームメンバーによってバックグラウンドや専門知識が異なるため、問題特定へのアプローチも異なる。定義フェーズでは、UXデザイナーが経験や知識をもとに、チームの焦点を合わせることに長時間を費やさなけばいけないはずだ。
賛同の確立に障害がある場合は、繰り返しディスカッションし、各フェーズの結果は、残りのプロセスから見た指針とならなければならない。(初回の焦点とのブレをなくすためにも)


なぜほとんどのUXは機能しないのか。

前述の記事では米国のデザイナー志願者に対する警鐘的な内容であったが、日本のUXデザイン事情に視点を移すと、まさに危うさを感じた。

10年ほどUXデザインの現場を見てきて、個人的に感じていることは、日本では直線的プロセスに都合よく装飾をしたアプローチ、つまりシンデレラストーリーがむしろデザイナーを採用する企業に好まれる傾向にある。しかも、国内ではデザインコンサルティングとして名が知れた大手企業でもそのような傾向にあるということ。

これは学生や志願者がスクールや先輩デザイナーから学び理想のテンプレートとして疑問を抱かずに浸透していたりする。

そして、実際にデザイナーとして採用され、担当するプロジェクトの中で、直線的プロセス一辺倒のUX設計を行うということが必然と多くなるというロジックが形成されている。

直線的プロセス、つまりシンデレラストーリーはいわば、典型的ならハッピーエンドであり、唯一の正解である。
UXデザイン自体がこの正解に一本道で導くフレームワークのように認識されていて、テンプレート的な作業をステップしていけばほぼ正解が出ると錯覚されているようにも思える。


ハッピーエンドは共感しやすいが・・・

デザイン企業がUX案件を獲得しようとする時にもこのシンデレラストーリーは聞こえがよい。顧客にもシンプルに言語化されたメリットが伝わるのとプロセスがリニアになるので、納期に対するクオリティの期待値も高くなりやすい。

こうして企業・デザイナーと顧客が一団となって意識的に直接的なプロセスを施すことになり、納期が忠実に守られた理想的ミッションが行われた上で「完成」となる。

このように設計されたUXは現実との乖離が多く、霧にかくれた本質的問題や革新的なアイデアは、「完成という蓋」をすれば以後見えなくなる。ほとんどのUXは本当の課題や解決策を見つけられないまま、納品され、ユーザーに提供されることになるのである。

では、「機能しないUX」を設計してしまわないようするには具体的には何が必要なのか。UXデザイナーは何をしなければならないのか。

解決策は、冒頭に紹介した記事の中盤からラストにかけてデザイナー志願者への提言として書かれているのと、ニールセンノーマングループのデザイン思考が参考になるので、深ぼりたい方はご参照ください。

尚、日本のUXデザインにおいては特有の環境というか性質があって、課題感が異なったりもするので、今後はそのような視点も含めた自分の見解書いていきたい思う。


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