93日後にネタバレする【雑学の本】#11日目──「ナポレオン」がまたがったのは白馬ではない!?
アルプス越えのナポレオンの勇姿に
〝盛りすぎ〟疑惑
フランスの画家ジャック・ルイ・ダヴィッドが描いた絵画の一つに『サン・ベルナール峠を越えるボナパルト』がある。
世界史や美術の教科書などでも目にしたことがあるだろう。
描かれているのは、フランスの皇帝ナポレオンで、イタリア遠征のため、グラン・サン・ベルナール峠を経由してアルプス越えを指揮する勇姿を描いたものだ。
後ろ足で立つ白馬にまたがり、颯爽と指揮を執るナポレオンの威風堂々とした姿に魅了される。
しかし、じつはこのイタリア遠征の際、ナポレオンは白馬に乗ってはいなかったといわれる。
ナポレオンがアルプス越えを決行したのは史実だが、それを絵に残す際に、かなり脚色されてしまったらしい。
真相は「ラバ」に乗っての峠越え
ナポレオンはダヴィッドに、「荒ぶる馬の馬上でも、平然としている姿を描いてほしい」とリクエストしているのだ。
実際には、天候が穏やかなときに、ラバに乗って峠を越えたにもかかわらず……。
一説には、ナポレオンのラバはガイドが手綱を引いていたともされる。
その姿を表わしているのが、ポール・ドラローシュが描いた『アルプスを越えるボナパルト』だ。
ダヴィッドの絵はいかにもわざとらしいとして、ナポレオンのコレクションを持っていたオンズロー家が、ラバに乗った実際の姿を描くように、ドラローシュに注文したものである。
「これぞ英雄の勇姿」というのは、あくまでも絵のなかでの話。険しい峠越えなら、たしかに馬よりもラバのほうが適しているだろう。
しかし、この勇壮な絵は、よほど本人も気に入ったのか、似たような構図の絵が複数枚、残されている。
いずれもナポレオンからの依頼で、白馬ではなく栗毛の馬が登場するバリエーションもある。
「やや盛りすぎでは?」と思われる一連の絵画だが、英雄ナポレオンの「思惑」や「虚栄心」が透けて見えるようで興味深い。
◆本書紹介
『身のまわりの「意外な勘違い」 なるほど雑学93』
──博識な人でも間違える常識の大ウソ
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