小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#10 君のために
黄昏わらべ 6月2日 木曜日 午後2時05分
愛知県 夏露中学校 美術室
「─よし!」
やっと書き切った。
改めて見直す。
わさびに仲直りのために届ける。曲名は「天体観測」。アカペラで歌う。
「あぁ、いい感じ」
「あとは練習だなぁ、、、」
「練習なら任せろって」
音楽の授業内での練習は、あと2回。その中と、あとは家や休み時間に練習しないといけない。
というか、葉凰はどうして、任せろって言うんだろう。こいつ、サッカー部じゃなかったっけ。
「なぁ、葉凰?」
「ん?」
「おまえ、サッカー部じゃなかったっけ」
「ちげーよ」
笑いを含んで言う。
「吹奏楽部だよ」
「え!?」
サッカーが得意そうなのに、吹奏楽部?運動はできてたはず。
「部活無しにしようと思ったら必ず一つは入れって言われたから、テニス部って言ったら担任が聞き間違えてこうなった」
「なるほど、、、」
笑うしかなかった。
聞き間違えで吹部になるとは。
「だから、練習は任せろー」
「、、、!」
こんな俺に力を貸してくれるなんて。なんていいやつなんだろう。
「お願いします!!」
俺は頭を深く下げて、言った。
宵宮氷 6月2日 木曜日 午後7時
静岡県 じいちゃんの家
「今日な、学校で歌ったんだ!」
「おぉ、どんな歌を歌っただ?」
「天体観測!知ってる?」
「あー、おら知らんなぁ」
「見えないものを見ようとしてーってやつ!CMで観てない?」
「おらぁふるさとしか知らん」
「え笑?」
「うーさーぎおーいしー」
「うさぎはおいしくないでしょ笑?」
「そういう歌い方だっちゅうに」
俺らは笑う。
今日、突然歌えと振られとりあえず「天体観測」を歌ったら褒められた。
「それじゃ、ごちそうさま!」
「今日は手伝わんでええぞ」
「なんで?」
「定休日」
またしても笑う。やっぱり楽しい。
「分かった!じゃあね、おやすみ!」
「歯は磨いてけよー」
「はーい」
歯を磨いて3分後、二階に行く。そして、ベランダに出る。
「んー、、、」と大きく伸びをする。今日も頑張った。
今日はよく晴れていたから、星がぽつぽつと光っている。それらをまっすぐに観る。
─そういえば、わらべたちともよく星観てたな。
駄菓子屋でアイスを買って、空き地のベンチに座って食べながら観ていた。
誰もいなくて、景色がよくて、家が近くて、過ごしやすい。すごく楽しかった。
今もあいつらはあそこで星を観てるんだろうな。
いいなぁ、と思いながら部屋に戻り、窓を閉め、ベッドに転がった。
天井を見つめながら、早く夏休みにならないかな、とわくわくして眠りについた。
続
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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それじゃあ
またね。