
髪に対する価値観が合理的すぎる私たち
中学生のころ、同学年の女子生徒3分の1が縮毛矯正をかけた。
「3分の1」はあくまで偏見だが、それほどたくさんいた。
おかげで当時の女子の髪型は、長さは違えどみんなわざとらしい直毛。
加えてみな同じ制服を着るものだから、より誰が誰だかわからない。
揃いも揃ってつまらない、と、当時ライオンのような癖毛だった私は思っていた。
「直毛こそ正」の風潮

たしかに扱いづらい髪だったが、これはこれで自分の髪を気に入っていた。
さほど剛毛なわけではなく、髪質が硬すぎるわけでもない。
くるっとした髪は「パーマじゃないの?」「その髪が自然だなんて、可愛くてうらやましい」とよく言われた。
そんな自分の天然パーマを攻撃され始めたのが、「直毛ブーム」の中学時代。
四方八方から、「エビアンも縮毛かけなよ!」とおせっかいを言われる。
直毛こそ正で、癖毛は悪。
いつしかそんな構図になっていた。
直毛に憧れがあったのは間違いない。
でも、私もあの髪型になるの?と、3分の1の女子を見て思っていた。
変わり映えがしない。そして、「私といえば天然パーマ」と自負しているところもあった。
自分の個性を貫く。「縮毛矯正をかけない」選択を取った、数少ない女子生徒だったと思う。
縮毛矯正の目的って、時短以外ある?

高校に入学して、1学年の人数が倍(女子校に入ったので、女子の人数は約4倍)になったため、縮毛矯正をかけている子はさほど目立たなかった。
加えて「縮毛信者」もいなくなった。「あえて縮毛矯正しない」人とは出会わなかったものの、天然パーマを尊重してくれる声は多くあった。
ある日、同じ部活の子が縮毛矯正をかけて部室に現れた。
かねてから髪の手入れで悩んでいた話を聞いていたので、よかったと素直に思う。
彼女も「これで髪にかける無駄な時間が減ったよ!」と嬉しそうだ。
その夜、彼女の縮毛矯正について母に話すと大変驚いていた。
「縮毛矯正の目的が、髪にかける時間を短縮するためなんて。合理的だね……」と。
むしろ縮毛矯正の目的はそれしか無いくらいに思っていた私は、その意見に驚いた。
世間一般の主たる目的は「可愛く見せるため」であることを、世間知らずの女子校生は初めて母から教わったのである。
それから約1年後、私も満を持して縮毛矯正をかけた。
もちろん「髪にかける時間を減らすため」に。
「カラーは値段が高い」と言い切る同級生

先日、高校の同級生2人と久しぶりにランチをした。
あのとき縮毛矯正をかけた彼女はいなかったが、その2人も同じ部活の出身だった。
ひょんなことから、美容院の話題になる。
そういえば大学入学してすぐ、2人は髪を染めたはずだった。
今はすっかり黒髪に戻っている。
理由を聞いたわけではないが、そのうちの1人がこう言い出した。
「髪染めるのって、お金かかるじゃん?」
共感しながら笑ってしまいそうだった。私の同級生はどこまでも合理的だ。
そろそろ髪を染めに行かなきゃ、と思っていた私は今、美容室に行くことを思い止まっている。