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麥生田兵吾、シュヴァーブ・トム展 。本当にその音と時間はあるのか

京都新聞 2024年 11月9日掲載

ギャラリー入り口には 、麥生田(むぎゅうだ)兵吾の青空の写真(左)と、チェコ出身で京都在住のシュヴァーブ・トムによる波状の画像が並ぶ。青がテーマの二人展だ。

シュヴァーブは、シンプルな装置を介入させて、時間や運動を可視化するインスタレーションや写真を制作する。今回は、コピー機のような構造のラインスキャンカメラで複数の青い振り子を撮影。画像にはその動きが、揺らぎのある波の重なりとして焼き付けられている。

茶室にある作品は、ターンテーブルの上でレコードが回転し、接続されたオシロスコープ(音を波形の線として表示する機械)が、レコードの音を視覚化している。レコードはこの作品のためにシュヴァーブが1枚だけプレスしたもので、音源はオシロスコープの波形が円として表示されるよう作成したデジタル音だった。ところがオシロスコープの画面の線は、絡んだ糸のように弾んでいる。アナログ化の過程でノイズが生じたのだろうか。機械の想定外の反応が、おかしみを誘う。

麥生田は、青空をバックにして、少年少女たちの表情や動きをスナップショットで撮影。切り取られた彼らの生の瞬間は多幸感にあふれ、非現実なものにも感じられる。「時間」は、本当にこのような瞬間の積み重ねなのか、それとも作家の巧みなトリックなのか?

eN arts=東山区円山公園内 11月30日まで 月〜木休)

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