そんなに働かなくてもいいんじゃね、な生き方を教えてもらった

私が入ったNPOのセーリングクラブには平日の昼間からうようよしている人がたくさんいた。リタイアしているお年寄りではなく、働き盛りだろうな的な年齢の人たちが昼間っからセイリングクラブにたまっていて、おしゃべりしたりセーリングやウインドサーフィンを楽しんでいた。

日本なら昼間からぶらぶらしている働き盛りの人はあまりいないのではないだろうか。たとえば平日の昼間にスーパーでお買い物をしている働き盛りの年代の男性は少なかったりする。

私の住んでいるところでは、平日の昼間にぶらぶらしている働き盛り年代がわんさかいるのだ。

アメリカに来てからびっくりしたことがたくさんあったが、その一つはそんなに働いてどうすんの?というスタンスで生きている人たちがたくさんいたことだった。それはその後の私の仕事への価値観を変えてくれた。

誤解のないように付け加えておきたいが、キャリア志向で朝から晩までがっつり働く人たちだってたくさんいる。特に私が所属しているIT業界は競争が激しくワーカーフォリックが多く存在していて、とんでもない時間に仕事メールの返信が来たりする。

その反面で、仕事ばかりが人生じゃないと、自分の好きなことを優先させて生きている人たちもたくさんいるのだ。生活するためのお金を稼ぐことは大切だけど、ある程度の生活ができればそれでよいし、お金を稼ぐために時間を犠牲にしたくないと考える人たちがいる。

もちろん働く時間が少なければ入ってくるお金は少なくなる。でも自分で好きなことをするための時間を作るためには仕事を減らして生活費を抑えればよい。無駄なものは買わないで賢くお金をつかう。大して好きでもない仕事をしてお金を稼いで、大きな家に住んだり、高級な車に乗ったりという人生もあるだろう。でもお金を節約しながら生活して、時間という貴重な財産を守るという生き方もある。だって時間は限られているのだ。リタイアしたらこうしよう、ああしようと思っていたらリタイアしたとたんにワイフが先に亡くなってしまった、と嘆く初老のおじさんに出会ったことがある。

終身雇用という制度がないアメリカでは、頻繁にレイオフがあるし、転職はあたりまえだ。しばらく仕事をしてお金がたまったら旅にでてお金が無くなったらまた働くという人もいる。アメリカ社会では仕事についたり離れたりがしやすいし、反対に同じ職場に長く働きすぎると経験が少ないという理由で転職するときに不利に働いてしまう。

自分でビジネスを始めるハードルも比較的低い。私のウインドサーフィンの仲間のうちウインドサーフィン好きが高じて自分でウインドサーフィンのビジネスを始めてしまった人たちが3人いる。全員がアメリカでトップクラスの大学を卒業しており、そのうちの一人はMBAとCFAを保持しているファイナンスのスペシャリストだ。日本的に言えば有名大学を卒業後、数年働いて退職したあとサーフショップを開いた、という感じだろうか?

私の親しい友達はやはりMBAの保持者だけれど、20代の時に働いて貯めたお金を運用しながらセーリングを中心にした生活を送っていた。現在は子育てを中心にした生活を送っているが、30代の当時は徹底的に生活費を切り詰めるかわりに、自分の時間を守り好きなこと(=セーリング)に使うというポリシーで生活していたのだ。

基本的にワーカフォリックの私はぶらぶらして過ごすことはできない。何かをしていないと落ち着かないのだ。おまけに100%テレワークで通勤がないので仕事へのストレスは比較的低い。それでも仕事でミスったときやストレスを感じるときは、たかが仕事、とふっきることが秒速でできるようになった。

仕事のことで悩むなんて時間がもったいない。だって仕事は人生のほんの一部でしかないのだ、というとても大事なことをアメリカに来てから教わった。

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