結婚なんて不安定なことに頼っちゃダメ
一緒に暮らすのは嫌だけど別れたくない。
こんな優柔不断な男とはきっぱり別れた方がいい。我慢の限界に達した私は別れる決意を固めた。
これには彼も驚いた様子だった。まさか本当に別れようとしているとは思ってなかったようなのだ。私の行動力を甘く見てもらっては困る。仕事でもプライベートでも行動する力(excecution skills)は私の最大の武器なのだ。
これが功を奏したのか、はたまた無理やり押し切ったのか、ついに一緒に暮らすことを承諾した。別れるよりは一緒に暮らした方がいいと思ったようなのだ。
こうして私たちはアパートを借りて一緒に暮らし始めた。最初の2か月は自分がこれまで借りていたアパートをあきらめられず、ボーイフレンドは一緒に借りたアパートと今まで住んでいたアパートの2か所の家賃を払っていた。今にして思えば何という優柔不断な人だったのだろう。
ついに自分のアパートを手放した11月に家族にあたらめて紹介するから感謝祭のお祝いもかねて故郷のニューヨークへ行こうと言い出した(これまで彼の家族にはカリフォルニアで面会済み)。プロポーズの言葉はなかったけど結婚しようという意思だったらしい。そのことは彼の家族が勢ぞろいした感謝祭のディナーの時に判明した。
僕たち婚約したんだ!
聞いてないけど?と驚いたのと同時に目標を達成した!と思った。結婚に失敗している自分としてはこの平坦だけどおだやかな関係を壊したくなかったし、ここまで長く付き合った(6年)のだから結婚することがゴールなのだとなぜか思い込んでいたのだ。
彼の家族はみなとても喜び家族の中で私だけがユダヤ人ではなかったのに暖かく迎え入れてくれた。特に彼のお母さんは私のことを娘のように可愛がってくれそのことは今でもとても感謝している。
年末にはボーイフレンドを日本に連れ帰って家族に紹介したが、こちらは父の大反対にあって大騒ぎになった。このことについてはエピソードがあるのでまた別個で書こうと思う。
晴れて婚約が決まり、意気揚々と大上司であるお茶の水博士に報告しに行った。
結婚することになったから永住権のサポートは必要なくなりました。ありがとうございました。
すると御茶ノ水博士は
結婚なんて不安定なものに頼ってちゃだめだよ。婚約したってどうなるかわらないんだし、会社からのサポートはこのまま継続させておきなさい。
表情を曇らせて私を諭した。
喜んでくれるかと思ったのに意外な反応だった。でもおとなしくお茶の水博士のアドバイスに従って会社からのサポートを継続することにした。
これが本当に幸いした。
御茶ノ水博士が言ったとおり結婚なんて不安定なものなのだ。私たちはその6か月後に結局別れることになってしまった。会社からの永住権サポートを断らなくてよかった。
会社を通じて永住権が出たおかげで私はアメリカで生活することができている。直属の上司であるCさんからの就職への説得といい、御茶ノ水博士のアドバイスといい私には常にどこかで助けてくれる人たちがいる。彼らのサポートがなかったらアメリカ生活を続けることはできなかっただろうなと思うのだ。