50代で大学に入学するアメリカンスピリッツ

ルームメイトであるロバータはホメオパシー(代替医療のひとつで自然治癒力を使って病気の症状を改善していくメソッド)のドクターになるべく勉強していた。

彼女は当時50歳。4年制の大学は高校を卒業してすぐに取得していたので、一からのやり直しではなかった。しかしドクターになるためにはかなりの単位をとらなければならない。通信教育の大学に入り毎日勉強していた。マッサージセラピストとしての収入は少なかったから、私が下宿することによる家賃収入は彼女の生活を支えていたはずだ。

50歳からドクターを目指す、または大学に入りなおす。アメリカ的な年齢を気にせずに自分のやりたいことをやるというスピリッツはすごいと思った。

30歳超えて留学するなんて遅すぎるんじゃないか、そんな気持ちが常に頭の中にぶら下がっていた私だった。日本だったら結婚して子供を作る年齢じゃないか?そんなばかみたいな考えはアメリカに移ってきてから一気に消えてなくなった。

アメリカで出会う人はみな口をそろえて、

は?なに言ってるの?いくつになっても大学に入りなおす人はたくさんいるし、医者になる人だっているのよ。年齢なんて関係ない。自分がやりたいと思ったときが行動に移すときだよ。

実際に友達が働く病院では50代の研修医が入ってきたそうだ。その研修医は40代の時に自分の会社をたたんで医者になろうと勉強を始めた。

アメリカに長く暮らし、50代になった今、もしも年齢を気にして行動を移せない人がいるのなら、まったく同じことを言ってあげたい。いくつになったってやりたいことがあればやってみればいいのだ。日本人は往々にして年齢にこだわりすぎる。

学位をとるというのは簡単なことではない。お金もかかるからある程度生活に余裕のある人でなければできないことだ。キャリアに生かすための学位だったら、学位をとることによるメリットと学位をとるためにかかるコストを計算して、投資した分(学費と時間)のリターンがどれくらいになるかを計算することも必要だ。学位がなくてもできるキャリアなのか、それともロバータのケースのように、学位がなければできない職業なのか。

なによりも学位をとることによる達成感も検討材料にいれるべきだ。これは金額で換算することはできない価値だけれど、学位をとるかとらないかを決めるときの重要な要素だと思う。

私の場合は、日本で専門学校を卒業していたので日本での学位はない。当時の計画はコミュニティカレッジで2年制の学位(Associate Degree)を取ってアメリカでの就職先を探そうというものだった。日本でマーケターとして働いた7年間のキャリアと合わせればどこか雇ってくれるところは見つかるだろう。

日本から持ってきたお金でギリギリ2年間の学費と生活費をまかなうことができそうだった。


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