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#08 おしゃれなカフェにはご用心。

おしゃれなカフェで読書。優雅で贅沢な休日の使い方だ。歴史と文化に彩られた情緒あふれる学術都市・京都で、サンドイッチと紅茶を片手に読書するのは、これ以上なく絵になる風景である。そんな土地柄だからか、京都には居心地のいい空間を満喫できるブックカフェも多い。

私のお勧めはここだ。植物の緑と木材を生かしたインテリアが印象的なその店内は、シナモントーストの香りが漂っていて、静かに流れる洋楽が読書に似合う上質の空間を演出していた。植物園や美術館がすぐ近くにある閑静な住宅街に似つかわしい、そんな店構えをしている。

そんなブックカフェにはしかし、たった一つだけ、罠が潜んでいる。特に「一期一会」を大切にする読書家であれば尚更、だ。それは、「店員がセレクトした本をどうしても読みたくなるがゆえに、せっかく持ってきた本を読めなくなってしまう」ということだ。

店員の本の好みと私の本の好み、それはどれだけ似ていたとしても、決して重なることはない。必然的に、カフェの本棚に並べられた本は、自分で買って読むことはないだろうなと思うものが多いのだ。「持ってきた本を読むのはいつでもできる、でもここにある本は今日しか読めないかもしれない。」そうした切実で優雅さとはかけ離れた理由から、ブックカフェでは普段の読書とは違うジャンルの本を読んでしまう。

読書の至上の喜びが「新たな世界との出会い」であり、それが旅と似たものであるとすれば、ブックカフェで過ごす時間は非常に幸福な時間なのだ。とはいえ、同時にカフェを出るときに気づいてしまう。「あれ、今日読もうとした本を読めていないな」と。「毒のなんと耽美なることか」とでも表現すれば、この駄文も少しは文学的に締めくくれるだろうか?

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