#17 創作: タイトル「Stadtluft Macht Frei」

雨の降らない6月下旬の午後3時。都市の空気は充満する。まるで夏の到来を予言するように、湿気をまとった暑さで。

「都市の空気は自由にする」。そんなドイツのことわざを昔、世界史の授業で学んだ。自由を謳歌し闊歩する人々の行き交う大通り。それこそが都市の活気だ。自由は明日への活力だ。

人の行き交わない都市の大通りは、いくら道幅が広かったとしても、やはり魅力がない。それは、コンクリートとアスファルトに覆われた無機質な砂漠だ。都会の自由に憧れて田舎から出てきた。不自由な都会は、自然のない田舎と同じだ。

緊急事態宣言も明日で終わろうかという今日に、街を歩く。1か月前に歩いた時とは大違いだ。終戦後、ラジオから流れる甘美なジャズを、禁煙を破ったときのようにくらくらしながらむさぼったあの詩人を思い出す。

自由を表現しなければならない。表現することは、戦いであり、抵抗だ。おしゃれのきっかけを落としてしまう世界はごめんだ。ジャズを聴けない世界はごめんだ。緊急事態宣言に沈んだ卑屈な街の片隅のカフェで、自由の灯火を燃やし続けよう。

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