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怪獣と猫
朝の支度をしていると、ゴトゴト二階から物音が聞こえる。
父 起きたね
私 目覚めたね
母 怪獣が
我が家には怪獣がいる。
天使のような怪獣。
母に家にいる娘の様子を聞くと、怪獣よ。と答える。その一言でだいたい想像できちゃう。
様子を聞きに電話をくれた先生も、怪獣と母が言ってますと答えると想像できると笑ってくれる。
怪獣さんが起きて一番にする事は、
猫のちょびにあいさつだ。
二階から降りて、
ちょびを探す。
私の横に座っているのだけど、気づかないらしい。
どこにおるんかなぁー?と窓の外に目をやるとそちらへ行ってみる。
いない。
目をまんまるくしてこちらを見るので、テーブルの下を覗き込むフリをするとテーブルの下を探し始める。
(横にいる事を教えてあげない私も意地が悪い)
キョロキョロ見渡して、やっと横で丸まってくつろいでいるちょびを見つけ、
嬉しそうに近づいて激しめのあいさつ。
ちょびもゴロゴロ喉を鳴らしているので、満更でもない様子。
この怪獣さん、激しくてなかなかしつこいので、
ちょびもすぐにしっぽを振りながら反撃モードに入り始める。
そこを読み取るという事はないので、反撃をもろに受けて、手は傷だらけだ。
傷ついてもいいの。好きだから。
どこかで聞いたことのある歌を体現しているみたい。
恋愛だと
好きだから嫌われたくないから私が傷ついても我慢する。なんてよく聞くけど、
我慢というものには限界がやってくるもので、破局となる事が多いのではなかろうか。
彼女とちょびの間には我慢というものが存在しないので、痛々しく感じない。
こんなに傷だらけなのに。
嫌われたら。なんて1㎜も考えてないんだろうね。
我慢してるとするとちょびの方かも。
いや、ちょびも嫌だと逃げてる。
毎日
追いかけられ
逃げ
しつこくくっついてこられ
激しくなでられ
よだれもつけられる。
反撃
逃げる
の繰り返し。
嫌いなのかと思うと、ちょびもわざわざ娘の横に丸まってくつろいでいるので不思議。
今日も怪獣さんは傷だらけ。
私に片方だけ脱いだ靴下を入れたビニール袋をプレゼントしてくれる優しさを持った天使。