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念願のUeshima Museum(東京)へ

今年6月に、渋谷に新しくオープンしたUeshima Museum(植島美術館)に行ってきました。

オランダに住んでいる私は、この美術館がオープンした6月に日本在住のアート好きの方々が各種SNSに次々にあげる写真やレポートを羨ましい思いで見ていました。

ですので、今回の一時帰国時には必ず行こうと思っていました。




Ueshima Museumは地下一階から5階まであります。一般的な美術館ほど広くはありませんが、各階にさまざまなアーティストの作品が展示がされていました。

1階 エントランスホール


名和晃平《PixCell - Deer 40》2015年

入場すると最初に目にするのは名和晃平氏の作品「PixCell - Deer #40」。このシリーズは、インターネットで集めた動物の剥製の表面をガラスビーズで覆った作品です。「PixCell」という言葉は、Pixel(画素)とCell(細胞、粒、器)を掛け合わせた造語なんだそうです。

エントランスホールには、詳しい作品解説が書かれた作品リストがあるので持っていくと便利です(ここは、スマホじゃないんだとちょっと思いました)。

このリストには地下から5階の順番に作品が紹介されていましたが、個人的には5階まで一気にエレベーターで昇って、階段を使って降りていく順路がいいかなと思いました。


5階 松本陽子

松本陽子、左《生成と解体》1995年、右《光は闇の中に輝いている》1992年

5階には松本陽子の作品が展示されています。

松本陽子の色と言えば、ピンク。そのピンクが存分に使用された作品。ゆらめく霧のように流動していて、柔らかく包み込まれて吸い込まれてしまいそうになりました。

松本陽子《熱帯》2021年

緑と言う色と垂直の線のせいか、植物的な生命力を感じました。樹木の間から光と海と花の輝きが見えるようです。


階段の踊り場

5階からは階段を使って降りました。

階段の踊り場には杉本博の写真作品が飾られています。壁の高い位置に飾られているので、よく見える位置を探す見るために、何度も階段を昇ったり降りたりしました。

3階と4階の展示室は土曜日と日曜日のみ公開されていて、平日はオフィスとして使用されているようです。

それから、たしか3階と4階だったと思うのですが、展示室の外に自動販売機があるエリアがあります。美術館自体にはカフェはありませんが、疲れたりのどが乾いたらそこで一息いれることができます。


2階 オラファー・エリアソン、塩田千春、ルイーズ・ブルジョワ・・・

オラファー・エリアソン《Eye See You》2006年

SNSに上がってきたUeshima Museumの画像の中で一番見たかった作品がオラファー・エリアソンの作品でした。このライトがずらーっと並ぶ光景を見たかったんです。

実際に見て感じたのは「なるほどね!」でした。ちょっとネタバレをされたような感じ。

ですが、この作品の前に立ったひとやものが等しく同じ色(黄色)になるというコンセプトは、人種差別問題に敏感な欧州に住む日本人(アジア人)として考えるところが多かったです。(エリアソンは太陽光を模しているんでしょうけど)

名和晃平《PixCell - Sharp's Grysbok》2023年

堂々とした立ち姿と、ビーズが反射する光によって発光しているように輪郭があいまいになることで神々しさも感じます。

塩田千春《State of Being (Two Chairs)》2012年

二脚の椅子にまつわる物語がこの空間にぎゅっと凝縮されているようです。

椅子に傷の一つもついていないところが、夢の世界を思わせます。

ルイーズ・ブルジョワ《無題》1968年

日本だと、六本木ヒルズの広場にある大きなクモのオブジェで知られているルイーズ・ブルジョワですが、空に浮かぶ雲も大切なモティーフです。

オランダのハーグ美術館には、重度の不眠症に苦しんでいた彼女が夜中に描いた空のスケッチを基に制作した巨大な彫刻作品があります。

ふわふわとした雲や空の間にぽっかりと洞窟が潜んでいて、しかもその洞窟が一番大きくて彼女の苦しみが表現されているので、Ueshima Museumが所蔵するこの素描もおそらくきれいなだけではない、彼女のトラウマが表現されているんだと思います。

1階 岡崎乾二郎、リヒター・・・

岡崎乾二郎《月花》2022年
岡崎乾二郎《あお空の奥か》2022年

2枚セットの岡崎乾二郎の作品。それぞれ古賀春江の代表作《月花》と《海》から着想を得ています。

着想の素となった古賀春江の作品を知っていれば、「ああ、あれね!」とすぐわかる色使いです。

《月花》のほうは、古賀がクレーの強い影響を受けているときに描いた作品を下敷きにしているので、なんとなくクレーが描く魚までが見えるようです。

Gerhard Richter, Abstrakte Skizze, 1991

そして、岡崎乾二郎の作品のとなりにはリヒター。並べたくなる気持ちがよく分かります。

地下一階 

大型の抽象絵画と立体作品が並んでいました。ここでは平面の画面が立ち上がっていたりうねっていたり、立体なのに影があまり見えず平面に見えたりと、ペインティング(絵画)とは?立体(彫刻)とは?との問いが投げかけられているようでした。

さいごに

今をときめくアーティストたちの素晴らしい作品がたくさん見られました。

それから、完全事前予約制だったり、入館と各展示室に入るときはQRコードをかざしてドアを開錠して入ったり、建物内の一部をふだんはオフィスビルとして利用しているなど、新しい試みに満ちた興味深い美術館でした。

さいごのさいごに。

ロッカーは、自分で暗証番号を設定するタイプでした。私はこのタイプのロッカーがはじめてだったので、大変手間取りました(汗)


Ueshima Museum
東京都渋谷区渋谷1-21-18 渋谷教育学園 植島タワー


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