ある日の あの日〈8〉
喫茶店を閉店して、
1年が過ぎました。
私の気持ちの中で、
自分のやっていた喫茶店は、
今、不思議と
遠くにあります。
「あの頃」「昔」…
それくらい遠くに店があって、
時々、
店のことを話してくださる方がいると、
ありがたいなぁと思います。
予定していた最後の営業日は、
家族の事情で営業ができなくなり、
私は最終日の営業をしないまま、
店を閉店しました。
本当は、
最終日はお客様と、
コーヒーの話をたっぷりして、
おしまいにしたかったなぁ、
と思っていたけれど…
ドラマのように、
うまくはいかないものです。
さまざまなことが。
「理想と現実は違う」
そうであって、
そうでもなくて、
そうなのです。
こぼしたい言葉を、
もうこぼさないように、
私は、
あの日を遠くにしているのです。
たぶん。
けれど、
たくさんたくさん、
いいことがあって、
いい人達に会えました。
それも思い出した10月です。
「10月1日はコーヒーの日」
そう書いたポスターを作っては、
毎年、喫茶店の壁に貼っていました。
10月は「コーヒー月間」
そう決めていました。
反響はちょっとだったけれど、
ちいさな店の、
ささやかな盛り上がり月間でした。
私よ、
たくさんのよかったことを
近くに置いて、
飲み込んだ後味は、遠くで、
味わい深くなるのを、
待ちましょう。
喫茶店をやっている頃に
描き始めた毎月の絵はがき。
10月は絵も詩も、
いつもコーヒーがテーマでした。
昔描いたコーヒーにまつわる絵はがきと、
ひそやかに絵に合わせて書いていた詩を、
少しずつ載せてみます。
コーヒーを飲める方も飲めない方も、
もしよろしければご覧になっていただけましたら…
10月なので「コーヒー月間」
ささやかに。
満ちていて
足りなくて
しっかりして
揺らいで
元気で
くたびれて
どきどきして
ほっとして
うれしくて
さびしくて
急いで
ゆっくりで
歩いて
立ち止まって
ゆき過ぎて
やってきて
ひと息ついて
ふわり。
わたしの時間が
香ります
「10月1日はコーヒーの日」
(2012年10月に書いたものです)